鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

福井銀行による福邦銀行の子会社化

[要旨]

福井銀行福邦銀行に50億円を出資するという発表が行われましたが、これは、事実上、福井銀行福邦銀行を子会社にするということです。このような、子会社化という経営統合の事例は、救済される側の銀行の体面を保てないという事情で、あまり行われてきませんでしたが、今回の事例を端緒に、今後、同様の手法による経営統合が増えてくる可能性があります。


[本文]

先日、福井銀行が福邦銀行に50億円を出資するという発表がありました。両行とも直接的には言及していませんが、福井銀行の出資によって、福邦銀行福井銀行の子会社になるようです。この例のような、銀行が他の銀行を子会社にするという例は、多くありません。すべてを確認していませんが、私が把握している範囲では、平成13年に、当時の福岡シティ銀行長崎銀行を子会社にして以来だと思います。(現在、長崎銀行は、旧福岡シティ銀行が旧西日本銀行と合併してできた、西日本シティ銀行とともに、西日本フィナンシャルホールディングスの完全子会社です)

この、銀行が他の銀行を子会社にするという手法は、福井銀行の林頭取が「株主などに直接的な影響がない中で提携を進めることができ、労力、コストがかからない」と述べているように、労力やコストの面でメリットのある手法です。しかし、最近の銀行の統合は、新たに持株会社を設立し、複数の銀行がその子会社になるという例が一般的です。このような、持株会社方式は、規模が同程度の銀行同士の統合であれば理解できるのですが、貸出金の額の規模で約7倍の差がある、横浜銀行(令和2年3月の貸出金は約11.5兆円)と東日本銀行(同約1.6兆円)の経営統合も、新たな持株会社の設立により行われました。(ちなみに、令和2年3月時点の福井銀行の貸出金は約1.7兆円、福邦銀行の貸出金は約0.3兆円です)

このような煩雑な手法をとる理由は、事実上、救済される側の銀行の体面を保つことと思います。しかし、今回、福邦銀行福井銀行の子会社になるという方法をとったことは、それだけ、福邦銀行に差し迫った事情があったのでしょう。現に、65億円の公的資金を受けている福邦銀行は、それを令和3年度中に返済するよていですが、福井銀行から福邦銀行への50億円の出資によって、実質的に、その大部分を福井銀行が肩代わりするということになります。私は、両行の統合は、福井県の経済界にとってよいことだと思いますが、今回の例のように、銀行が他の銀行を子会社にするという手法がとられたことによって、他の地域でも、同様の手法をとる例が現れるのではないかと考えています。そうなれば、地方銀行の再編は加速することになるでしょう。

f:id:rokkakuakio:20210118152538j:plain