鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

借金は悪か?

[要旨]

「借金をすることはよくない」という意見は、一定の場合に当てはまります。それは、事業の先行きが悪化するときに受ける場合です。一般的に、金融機関は、融資をすることが、融資を受ける側にとって利点があると判断できるときにしか行わないので、両者にとって利点がないという融資は、実際には多くありません。


[本文]

少数ではありますが、ときどき、「借金はすべきではない」という考え方をする人がいます。私は、この考え方は、ある前提の下では正しいと思います。例えば、今では少ないと思いますが、親の代から営んでいる魚屋さんがあったとします。店舗兼住宅は所有しているものの、それに関する融資は受けていないとします。店の商品は、ほとんど現金か、掛け買いで仕入れますが、売上も、現金か掛け売りなので、このような場合、事業の構造的から見て、融資を受ける必要はありません。

それなのに、もし、このような商店が借金をしているとすれば、事業が赤字になっているか、店主が私的に娯楽などに使うために借金をしているということになります。ですから、このような魚屋さんは、借金はすべきではない、というよりも、借金をしなければならなくなるということは、事業がうまく行っていない状態になっているということです。

でも、昔ながらの魚屋さんが、業態転換をして、コンビニエンスストアを営むことにしたとします。その時の、店舗建設費を調達するための融資は「悪」かというと、私は前向きな借金だと思います。その理由は、業態転換によって、より大きな利益が得られ、それで融資を返済でき、また、将来的に、資産として店舗を得ることができるからです。

銀行は、融資を行うときには、融資の資金使途を確認し、前向きな需要にしか応じることはしません。もし、赤字の会社に融資をするときは、将来、業績が回復する可能性があるときに限られます。一方、資金繰に窮している事業者の弱みにつけいり、不法な融資をする、いわゆる、闇金融業者もあるようです。そのような業者は、融資をした相手の事業の改善を目的にしているのではなく、融資した相手の財産を奪い取ろうとするところにあります。

「借金」に否定的な人は、そういった、不法な貸金業者からの取り立てに遭うことを避けるべきという考えから、借金は避けるべきと考えているのでしょう。だからといって、すべて、借金が悪ということではないということは、前述の通りです。繰り返しになりますが、金融機関は、少なくとも融資を判断する時点においては、融資を受ける側にとって利点があると考えなければ、融資には応じないものです。

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