これは、私がこれまで何度も述べてきたこ
となのですが、今回、赤字に関する銀行と
会社経営者の認識の違いについて、改めて
述べたいと思います。
融資をしている会社が赤字になると、いっ
たん、銀行は、その赤字をそのまま受け止
めます
たとえ赤字であっても、事業は続いていく
だろうとか、一時的なものかもしれないと
いう観点で見ることはしますが、赤字の会
社は赤字の会社です。
少なくとも好ましい状況ではありません。
そして、詳細は割愛しますが、銀行は赤字
の会社に対して警戒を始めます。
一方、赤字になった会社経営者の多くは、
赤字になったことをあまり深刻に受け止め
る方は少ないようです。
中には、赤字になったことを重く受け止め
る経営者の方にお会いしたこともあります
が、残念ながら、そのような方は少数派で
した。
では、なぜ、多くの経営者の方は赤字につ
いて、あまり敏感ではないかというと、そ
の理由のひとつは、現在の経営環境は中小
企業にとって逆風下にあるから、会社の事
業は赤字になることはやむを得ないと考え
ているからのようです。
でも、それは表向きであり、実際は、赤字
になったからといって、直ちに事業は行き
詰らないからです。
それはなぜかというと、事業が赤字であっ
ても、資金繰は直ちに底をつかないからで
す。
そこで、まだ資金があるので、そのうちに
挽回すれば大丈夫だと、安易に楽観視して
しまうのでしょう。
もうひとつの理由は、多くの中小企業の場
合、組織としては会社であっても、実際は
経営者個人の信用、いわゆる「顔」で事業
を営んでいるという面もあると思います。
例えば、多くの会社は、「赤字の会社に対
しては商品を販売(購入)したくない」と
いう方針を持っていると思いますが、経営
者が「どうか、自分の顔を立てて、自社に
商品を販売(自社の商品を購入)して欲し
い」と頼み込めば、会社が赤字であること
の影響は少なくなります。
いわゆる「浪花節」です。
そして、今回の記事の結論は、会社の事業
が赤字になった場合、それを直ちに改善す
る活動に取り組むべきということなのです
が、その前に、これからのビジネスは「浪
花節」は通用しなくなっていくということ
も強調したいと思います。
それは、現在のビジネスの世界では、年を
追って透明性が求められつつあり、当事者
にしかわからない事情で決定が行われるこ
とは批判されるようになってきています。
私が銀行職員時代には、赤字の会社に対す
る融資の稟議書を書いているとき、その案
件を取り上げようとする理由に事欠いて、
「経営者の人がらは極めて良好であり、主
力銀行として引き続き支援したい」という
決まり文句を書くことがあったのですが、
いまは、そのような抽象的な理由はまった
く考慮されなくなっているでしょう。
そのような背景を考えると、これからは、
中小企業であっても、決算書の数字に敏感
になっていく必要は高まっていると考えま
す。
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