鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

人手が多くても繁盛するとは限らない

8月のことですが、徳島市の伝統行事であ

阿波踊りについて混乱がありました。


(ご参考→ https://goo.gl/T3ahPp


これに関して、たくさんの報道があったの

ですが、誤解をしている方も多いと感じま

した。


誤解のひとつは、地域新興を支える役割が

ある市役所が、なぜ、「総踊り」をしよう

とする踊り手と対立したのかということで

す。


これについては詳細は割愛しますが、かつ

ての阿波踊りの主催者であった徳島市観光

協会が4億円を超える累積債務を抱えてお

り、今年3月に、徳島市は同協会の銀行か

らの借入金を肩代わりし、同協会の破産申

し立てをしています。


もっと簡単に言えば、「昭和50年代から

発生してきた」(徳島市役所のホームペー

ジより)累積赤字について、これ以上増や

すことを避けるために、同協会を破産させ

たということです。


ここで、私がお伝えしたかったことは、徳

島市は唐突に同協会を破産させたのではな

く、同協会が累積赤字の問題解決をここま

で先送りしてきており、その問題点は同協

会も認めていることから、単に徳島市の対

応だけを批判することは妥当ではないとい

うことです。


ふたつめの誤解は、「お祭りはたくさんの

人手があるのだから、工夫さえすれば、お

祭りの運営は黒字化できるはずだ」と考え

ることです。


4日間開かれる阿波踊りの人手は、今年は

108万人、昨年は123万人だったよう

です。


これだけの人手があれば、それなりの収入

もあるはずだと考える方が多いのも仕方な

いのかもしれません。


そして、社会起業家の木下斉氏によれば、

23万人の集客がある宮崎県宮崎市の青島

ビーチパークや、25万人が集まる札幌大

通公園の夏のビアガーデンなどは、黒字で

運営されており、地方のお祭りが赤字にな

ることを防ぐことが、決して不可能である

というわけでもないようです。


(ご参考→ https://goo.gl/nYz9xU


しかし、私も地方のお祭りの支援に携わっ

た経験から、お祭りの黒字化は決して容易

ではなく、阿波踊りの運営についても、現

実として30年以上赤字が続いていたとい

うことも、多くの方に受けとめていただき

たいと思っています。


その赤字の原因はひとつではありません

が、大きなもののひとつは、伝統行事であ

るから不採算になっても仕方ないという考

え方が広がることです。


私は、この考え方はおかしいと思っていま

す。


なぜなら、伝統行事を理由とするならば、

広告を出したり、無料バス運行などによっ

て集客することは行わず、自然体でお祭り

を行うべきです。


私は、広告を出したり無料バス運行を否定

はしませんが、そのような“商業的”な考

え方に基づいてお金をかける以上、赤字に

ならない範囲で広報を行うか、または、お

祭りに参加する方々でそれらの費用を負担

すべきです。


ただ、“お祭り”の錦の御旗があると、当

事者の人たちは、ある面で甘えが出てしま

い、それが長く続くとそれが当たり前と感

じてしまうことが、今年の阿波踊りのよう

な混乱につながってしまったのだと思いま

す。


と、ここまで阿波踊りの混乱について書い

てきましたが、今回の記事の主旨は、お祭

りへの批判でも、それに関して誤解をして

いる人たちへの批判でもありません。


実は、私が小売業や飲食店を営もうとする

方から融資のご相談を受けるとき、「●●

地区は人通りが多い」という要因だけで売

上が得られると安易に考えている方が多い

ということです。


もちろん、人手の多い場所で事業展開する

ことは、売上を増やすためのひとつの要因

ではありますが、それだけで売上が増える

ほど、事業は単純ではありません。


競争環境の激しい時代にあっては、マーケ

ティングミクス、マーチャンダイジング

ターゲティング、ポジショニングなど、精

緻な戦術を打ち出さなければなりません。


今回、阿波踊りのもめごとを見て、事業展

開はどんぶり勘定ではなく、精緻に行うこ

との大切さを改めて感じました。


自社の事業は、“お祭り”ではなく、実業

として考えなければ、安定した運営は実現

しないでしょう。

 

 

 

 

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