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東京商工リサーチの調査によれば、66.5%が正社員不足と回答しています。さらに、倒産した会社の、売上高に占める人件費比率は23%になっており、人手不足が倒産の大きな要因となっています。したがって、これからの会社は、付加価値率の向上や、従業員の定着率向上といった対応が強く求められていると言えます。
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先日、東京商工リサーチ情報部の後藤賢治さんが、人手不足倒産に関する取材記事を、ダイヤモンドオンラインに寄稿しておられました。その記事によれば、「東京商工リサーチが4月に実施した企業向けアンケートでは、企業の66.5%が『正社員不足』と回答した。このうち、大企業(資本金1億円以上)は73.2%、中小企業(同1億円未満)は65.5%」となっています。
さらに、「『正社員不足』と回答した業種は、タクシーなど『道路旅客運送業』が90.9%、運送会社など『道路貨物運送業』が88.1%、『総合工事業』83.4%、『宿泊業』83.3%など、労働集約型の業種が際立って多い」ようです。また、「『非正規社員不足』の業種は、『飲食店』85.0%、『宿泊業』81.8%と、コロナ禍の行動制限が解除され、採用競争が過熱している業種」となっています。
これらのことからも分かる通り、人手不足は、現在の会社の最大の問題となっていると言えるでしょう。事実、「2022年に倒産した企業と、コロナ禍前の2019年に倒産した企業を財務分析すると、売上高に占める人件費比率(人件費÷売上高)は、2019年は、倒産企業が14.5%(中略)だが、コロナ禍に見舞われた2022年は、倒産企業が23.1%と約10ポイント上昇」しており、人材不足が、単に収益を圧迫するだけでなく、倒産の大きな要因になっていることが分かります。
それでは、中小企業は、人手不足に対してどのような対応をすればよいのかというと、ひとつめは、収益力を高め、人権費の増加に対応することです。もちろん、収益を増やすことは容易ではないことは、私も理解していますが、現在は物価が上昇していることから、以前よりは人件費を価格に転嫁しやすい環境にはなってきていると思います。もちろん、価格を上昇しても、顧客が減少しないよう、付加価値を高める対応も同時に行わなければならないことは、言うまでもありません。
もうひとつは、従業員の定着率を高めることだと思います。従業員の定着率が高くなれば、人件費の増加を抑えたり、人手不足の影響を弱めたりすることができます。定着率を高めるための具体的な方法の記載は割愛しますが、顧客満足度は、従業員満足度を高めることによって実現するという方針で、経営戦略を見直すことが求められていると言えるでしょう。これまでは、資金不足が倒産の主な要因となっていましたが、さらに、人手不足にも対応しなければならないという、ますます厳しい状況になってきていることが伺えますが、これらの課題に直面している経営者の方は、早めに外部の専門家に相談し、迅速な対応をすることが、最も効果的ではないかと、私は考えています。
2023/5/24 No.2352