鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

金融機関から定性的な評価を得るには

日経ビジネス2018年3月26日号の、

「崖っぷちの地域金融を成長産業にする4

つの掟」という記事を読みました。


(ご参考→ https://goo.gl/1ji9T8


ここでは、4つの地域金融機関についてご

紹介されていましたが、そのうち、2つの

金融機関の取り組みについて目をひく点が

ありました。


ひとつめは、東京都新宿区に本店のある、

第一勧業信用組合です。


同組合では、浅草で芸者として働いていた

鹿島菊乃さんが、芸者が躍るための舞台が

設けられたバーを開店するために、

2,000万円を超える融資をしました。


資産もなく、決算書もなかったことから、

鹿島さんは、メガバンク地方銀行では融

資を断られたそうです。


一方、第一勧業信用組合では、もともと、

芸者ローンという融資を設けていました

が、同組合と古くから取引のある神楽坂の

料亭の経営者夫妻が、鹿島さんのまじめな

人柄や、芸への真摯な態度にお墨付きを出

したことが、融資を決めるときの有力な材

料となったそうです。


実は、芸能関連の事業というのは、銀行か

ら見て融資判断をしにくい事業なのです

が、同組合は、コミュニティ内の人間関係

や評判をもとに融資を取り組んでいるとこ

ろがすばらしいと感じました。


ふたつめは、広島市信用組合の例です。


同組合は、投信も保険も販売せず、本業の

融資に経営資源を集中することにしたそう

です。


そこで、山本理事長は、融資取引を増やす

ために、月に100件以上の取引先を訪問

しているそうです。


そんななか、ある、赤字続きの医療系ベン

チャー企業を訪問したとき、経営者から、

「研究員が無菌室で使う白衣は完全無菌が

求められるため、1着25,000円もす

るが、研究の質を保つために、一度着たら

必ず捨てている」という話を聞いたそうで

す。


この話を聞いた山本氏は、「本気で研究に

取り組んでいる」と確信し、4億円の融資

を決めたそうです。


その後、その会社は、大手製薬会社との提

携も決まるなど、優良企業に成長している

そうです。


以上、2つの事例を紹介しましたが、いず

れも、融資をしている金融機関は、数字に

は表れない定性的な面を評価して融資をし

ているということです。


ここで、「金融機関が目利き能力を高め、

融資先への定性的な評価により融資を判断

することは、融資を伸ばして安定的な経営

を維持するためには当然のことだ」と考え

る方は多いと思います。


確かにそうなのですが、一方で、金融機関

の目利き能力が高まったとしても、必ずし

も赤字の会社が融資を受けられるようにな

るとは限らないということにも注意が必要

です。


単に業績が悪いから融資を受けられないに

もかかわらず、「銀行は目利き能力がない

から、自社には融資をしてくれない」と不

満を持つ会社経営者の方もいます。


前述の2つの事例では、融資を受ける側が

融資する側の心を動かしたものがありまし

た。


定性的な評価を期待する経営者は、自社に

金融機関の心を動かす特徴があるのか、見

直す必要があると思います。

 

 

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