鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

セーフティネット保証とは?(3)

前回に引き続き、セーフティネット保証に

ついて説明します。


前回は、信用保証の承認から代位弁済まで

を説明しました。


ところで、信用保証協会(以下、単に、

「協会」と記します)は、保証した融資が

返済不能になり、融資を受けた会社に代

わって銀行に融資を返済する(これを代位

弁済といいます)わけですが、その原資は

どのようにまかなっているのでしょうか?


もちろん、協会は、保証をした会社から、

保証料を受け取っているので、それも、代

位弁済の原資になります。


ただ、最も大きい原資は、中小企業信用保

険の保険金です。


中小企業信用保険は、協会が協会保証の利

用者からの申し出に対して保証を行ったと

き、さらに、その保証に対して協会が保険

料を支払ってかける保険です。


中小企業信用保険は、現在は、日本政策金

融公庫が引き受けています。


かつては、中小企業信用保険業務は、昭和

33年に発足した、政府系機関である、中

小企業信用保険公庫が行っていましたが、

同公庫は平成11年に中小企業事業団など

と統合して中小企業総合事業団になり、同

事業団に保険業務が移りました。


ところが、平成16年に中小企業総合事業

団は、産業基盤整備基金などと統合し、独

行政法中小企業基盤整備機構になりま

したが、その際に、保険業務は、中小企業

金融公庫へ移管されました。


その中小企業金融公庫は、平成20年に解

散し、中小企業信用保険業務を含め、同公

庫の業務は、新たに設立された株式会社日

本政策金融公庫に移管され、現在に至って

います。


話を戻すと、協会は、銀行から代位弁済の

請求を受け、代位弁済を行った時、一般的

には、代位弁済した金額の、70%~90

%(保険(保証)の種類によって異なる)

を受け取りますので、ある面で、協会自体

はそれほど大きな損失にはなりません。


その分、日本政策金融公庫は保険金の支払

いを負担するので、私は詳細な数値は把握

していませんが、中小企業信用保険事業は

採算が取れず、政府からの補助でまかなわ

れていると思われます。


ちなみに、日本政策金融公庫の平成31年

3月期のディスクロージャー誌によると、

保険料収入は約1,219億円、責任共有

負担金収入は約46億円、回収金は約79

8億円で、計約2,063億円ですが、保

険金は約2,702億円です。


これらの数値は、すべて中小企業信用保険

に関するものかどうかわからないので、参

考程度としてください。


なお、責任共有制度負担金とは、負担金方

式の責任共有制度によって協会が保証した

融資について、協会が代位弁済した際は、

その後、代位弁済を受けた銀行が、弁済額

の20%相当額を協会へ支払いますが、さ

らに協会は、その一部を日本政策公庫に支

払っており、前述の数値はその金額です。


また、回収金は、協会が、協会の持つ求償

債権を回収できたとき、その一部を日本政

策金融公庫も受け取ることになっており、

その金額が前述の金額です。


協会は、中小企業信用保険によって、代位

弁済金の一部を保険金として受け取ります

が、それをもって、協会に代位弁済しても

らった会社が、協会に対して求償義務が免

れることにはなりません。


(ただし、会社が破産した場合は、当然に

会社の求償義務もなくなります)


もちろん、融資の返済ができなくなった会

社から、求償債権を回収することは難しい

ものの、協会が地道に働きかけて、部分的

に回収できることがあります。


その場合、中小企業信用保険よって支払わ

れた金額の割合に応じて、日本政策金融公

庫は、回収金の一部を、協会から受け取り

ます。


例えば、10万円の求償債権を回収できた

とき、中小企業信用保険で支払われた金額

の割合が、代位弁済額の90%だった場合

は、日本政策金融公庫が受け取る金額は、

9万円です。


今回は、中小企業信用保険について説明し

ましたが、この続きは次回、説明します。

 

 

 

 

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