鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

従業員目線

人気ブロガーの日野瑛太郎さんのご著書、

「あ、『やりがい』とかいらないんで、

とりあえず残業代ください」

( http://amzn.to/2gLAa51 )を読み

ました。


本の内容はとても面白いのですが、その

中でも「従業員目線を常にもちましょう」

と日野さんが薦めていた点に注目しました。


具体的には、日本の会社では、従業員に

対して「経営者目線を持て」とよく

言われるが、そもそも経営者としての

権限や報酬は従業員には与えられて

いないので、経営者の目線で従業員が

行動しても、その成果は経営者のものに

しかならない。


従業員は、従業員に与えられている権限や

報酬の範囲内で行動するべきだ。


よく「きっちり残業代を払ったら、会社が

潰れてしまう」などと従業員が会社を慮る

ことがあるが、法令や契約に従って会社は

サービス残業に対してきちんと残業代を

支払うべきで、それで会社が潰れるのなら

しかたない、というものです。


ただし、日野さんは、従業員がこのような

主張をできるようにする前提として、雇用

市場を意識して、エンプロイアビリティ

(従業員の雇用市場における価値・能力)

を備えておかなければならないとも説明

しています。


ところで、これだけを読むと、違和感を

感じる経営者の方もいるのではないかと

思います。


というのは、日本では、従業員と会社の

関係は強く、日野さんのご主張は、いわ

ゆる日本的雇用システムとは相いれない

からでしょう。


ただし、日野さんは、日本的雇用シス

テムは、会社が従業員を定年まで雇用

するという前提で成立するもので、

現在は、会社が従業員を定年まで雇用

することを前提としない例が多くなって

いるにも関わらず、会社に忠誠を尽くせ

という要求だけが残っていることが問題で

あると指摘しています。


話しを戻して、前述の日野さんの指摘は、

私は妥当と考えています。


妥当というのは、従業員は従業員目線で

働きさえすればいいということではあり

ません。


組織の構成員は、組織から得られる誘因の

大きさに従って組織に対して貢献をする

ということを指摘していることです。


例えば、サービス残業は、報酬(誘因)を

与えていないにも関わらず労働(貢献)を

させていることになります。


ここで、「それは建前だ」と感じる経営

者の方も少なくないと思います。


もちろん、サービス残業に応じている

従業員の方は、長い目で判断して、

サービス残業に応じることもあるかも

しれません。


しかし、それが積み重なり、そして、

あたりまえのこととなってしまい、本当に

サービス残業に応じても何の得もないと

感じるようになれば、従業員の方は会社に

対して不信感を募らせるばかりでしょう。


そして、それが限界に至った時に、退職

してしまうということにつながります。


もちろん、経営者の方の視点では、

「この従業員は、給料に相応した働きを

しておらず、困ったものだ」と感じる例も

あるでしょう。


その考え方も正しいと思います。


今回の結論は、誘因と貢献のバランスが

崩れると、組織は維持できなくなるという

ことです。


少し抽象的ですが、経営者の役割は、

誘因と貢献のバランスを取ることが

大切だということです。

 

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20170907095810j:plain