鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

残業が減らない真の理由は過剰品質

[要旨]

日本の会社で残業がなかなか減らない原因は、顧客からの要望を断りにくいという慣習が強いためと考えられます。そのような、「お客さまは神さま」という発想が、従業員を酷使することにつながることから、顧客の過剰な要望は断るという姿勢を打ち出すことも必要になるでしょう。


[本文]

人材コンサルティング会社のニッチモの社長、海老原嗣生さんの、日経ビジネスへの寄稿を読みました。海老原さんによれば、欧米では、100個の製品のうち、不良品が1個発生しても許されるが、日本では、1,000個のうち1個でないと許されないので、その精度を高めるために、日本では労働時間が1割~2割増えるということです。

確かに、日本では、「お客さまは神さま」という考え方が強く、顧客の要望は断りにくいという面があるでしょう。海老原さんも述べておられますが、顧客から、「明日までに納品して欲しい」という依頼を上司が受けると、部下は無条件に残業せざるを得なくなる、しかも、その残業代が支払われないこともあるという状況が実態だと思います。

では、このような状況を、どう、解決するかというと、顧客からは無理な依頼は受けないという方針を、経営者の方が示すしかないでしょう。「味の素『残業ゼロ』の改革」という本によれば、味の素では、社長自らが取引先の経営者に、「当社は4時30分に終業します」と伝えているそうです。もちろん、4時30分に受注を締め切る会社は、顧客からみれば不便を感じることになると思いますので、不便さを上回る魅力のある製品を開発することが前提になるでしょう。

ただ、このように述べると、私が、単に、経営者に対して、難しい課題を述べているだけだと受け止められるかもしれません。でも、一方で、優秀な人材を確保するためには、働きやすい職場を作る役割が経営者にあります。顧客満足を、従業員に苦痛を与えるという犠牲によって達成させるということは、矛盾していることになります。

むしろ、いままで、多くの経営者は、「お客さまは神さま」という金科玉条を盾に、従業員を無条件に酷使してきたと言えるかもしれません。今回の内容は、経営者の方にとっては、少し、きつい内容ですが、エクセレントカンパニーを目指すための発想の転換のきっかけにしていただければと思っています。

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