今回は、単純に、棚卸資産の評価に
ついて説明します。
棚卸の評価については、評価基準、
評価方法、評価単位という3つの
評価に関するルールがあります。
このうち、評価基準と評価方法は、
言葉だけでは違いが分かりにくい
ものですが、評価基準とは、どの
タイミングの価額を評価の基準と
するのかというルールで、一方、
評価方法とは、棚卸資産をひとつ
ずつ評価するのか、まとめて評価
するのか、まとめて評価する場合、
どのように評価額を計算するのか
というルールです。
具体的には、評価基準は、(1)
棚卸資産を取得した時の価額
(取得原価基準)、(2)棚卸
資産を評価する時の時価(時価
基準)、(3)取得した時の価額と
時価のいずれか小さい方の金額
(低下基準)の3つですが、
一般的な棚卸資産は低価基準で
評価することが原則となって
います。
(この説明の仕方は、厳密には、
ものとは異なりますが、理解を
容易にするために、あえて変えて
いることをご了承ください)
そして、評価方法は、(1)個別法、
(2)先入先出法、(3)平均原価
法(総平均法と移動平均法)、(4)
売価還元法、(5)最終仕入原価法が
あります。
それぞれどのようなものかという
ことについては、この記事では
説明を割愛します。
また、評価単位とは、棚卸資産を
1つずつ評価するか、複数で評価
するかというルールです。
原則は1つずつですが、複数で
評価することが妥当という場合も
あります。
例えば、自動車とその付属品を
評価する場合、それぞれ個別に
いくらで売れるかという見方で
評価するよりも、合わせて販売
するときの価額で評価することが
妥当ということができます。
ところで、これらの棚卸資産の
評価に関するルールは、なぜ
大切なのでしょうか?
簡単に言えば、棚卸資産の評価は
難しいということです。
例えば、会社の建物は取得価額を
減価償却していくだけで価額を計算
することができますが、棚卸資産は、
短期間でたくさんの数量を扱うため、
単純に計算できないということです。
だからこそ、複雑な規則があります。
でも、これも当たり前のことであり、
大切なことは、このルールを守ると
いうことです。
私はこれまで、正確な会計情報を
把握したり銀行に提供することが
大切だと述べてきましたが、規則に
基づかない方法で棚卸資産を評価
することは避けなければなりません。
確かに、会計のルールに基づく価額が
必ずしも正確な価額ではないという
こともありますが、それでも、会計の
ルールに基づく価額には合理的な
理由があります。
会社の事業の改善のためには、統一
されたルールに従うことが基本で
あると私は考えています。
なお、棚卸資産に関する知識は、
拙著「図解でわかる棚卸資産の
実務いちばん最初に読む本」
ご活用いただきたいと思います。