鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

銀行の決済業務と収益機会

よく、「銀行は3時で閉店するが、その

あとは何をしているのですか」ときかれる

ことがあります。


凡そ、4時までは、勘定を締める作業で、

その後5時までは、片付けをしています。


では、なぜ、3時で閉店しなければなら

ないのかというと、銀行法施行令

第16条第1項で「銀行の営業時間は、

午前九時から午後三時までとする」と

定められているからです。


といっても、それでは納得できる回答

ではないと思います。


大雑把に述べると、手形の決済をしな

ければならないからということになる

でしょう。


商取引で使われている手形について、

一定のタイミングで締め切らなければ、

ちゃんと決済されたのか、それとも

不渡りになったのかが確定されない

ため、銀行は毎日3時に銀行を閉店

するというルールができたのでしょう。


こう説明すれば、「決済業務以外の

仕事は3時で終わらなくてもいいの

では?」という疑問を持つと思います。


これは、例えば、融資業務においても、

融資金を預金に入金するという作業や、

逆に、毎月の返済金を預金から引くと

いう作業があるので、決済業務に

合わせて仕事をする必要があります。


ただ、融資業務の大部分は、融資審査

なので、最近は、決済業務や、預金

業務を営む店とは別に、融資の受付や

審査だけを専門に行う事務所を設けて

いる例も多く見られます。


いわゆる、法人専門の営業所や、住宅

ローン専門のお店で、住宅ローンは、

休日でも営業していることがあります。


話を本題にもどすと、前述の、決済

業務は、銀行にとってあまり収益源に

なっていないと私は考えています。


実は、銀行も、決済業務については

あまりコスト計算をしていないよう

ですが、ひとつの例として、セブン

銀行の手数料が参考になると思って

います。


非公開ではあるため、正確な数値では

ないものの、セブン銀行のATMで、

同行以外の銀行の預金者が預金を

引き出したとき、その銀行はセブン

銀行に対して200円ほどの手数料を

支払っています。


これを見れば、銀行は、ATMからの

引き出しに、約200円のコストを

見込んでいると考えていると言えます。


ただ、銀行によっては、そのコストの

一部または全部を預金者に負担させて

いるので、すべて銀行のコストとは

言えない面がありますが、コストが

どれくらいかかるのかという点では

参考になると思います。


ですから、1年間の普通預金の平均の

残高が100万円の人が、毎月、

10回の頻度でATMから預金を

おろしているとすれば、銀行は、

その人との取引に、2,000円の

コストがかかっていると見ることが

できます。


そこで、その人が、銀行に対して、

「1年間、1回もATMを使わない

から、24,000円を利息として

支払って欲しい」と言ったとしても、

銀行としては損はしない計算になり

ます。


(もちろん、実際には銀行はその

ような要求は受け入れないので、

ご注意下さい)


ここまで、銀行からみたコストに

ついて書いてきましたが、要は、

決済業務はあまり収益源になって

いないということです。


では、なぜ、銀行は決済業務を

行ってきたのかというと、それは、

口座がある人は、将来は、利益を

もたらしてくれる人(会社)に

なるであろうという期待があった

からでしょう。


しかし、セブン銀行のように、

ATMに特化した銀行が登場したり、

電子マネーが登場することで、

銀行だけが決済業務を引き受ける

必要はなくなりつつあると思います。


今回の結論は、「すべての人に同じ

サービスを提供する」ということは

これからはなくなっていくでしょう

ということです。


具体例は割愛しますが、私が

お手伝いをしている会社の中にも、

不採算な取引先との取引を続けて

いることが珍しくありません。


これは、収益にシビアな時代に

なったからこそ、採算の合う

会社の選別をすることなしには、

収益の維持は難しくなっていくと

私は考えています。

 

 

 

f:id:rokkakuakio:20170214211211j:plain