私がコンサルタントになったきっかけは、
大学で会計を習ったことでした。
私が所属した学部は、人文部で、当初は
英文学を専攻しようと思っていたの
ですが、たまたま人文部に関西ことばで
話をする面白そうな教授がいて、その
教授が会計学を担当していたため、
教授に惹かれて会計学を専攻することに
しました。
その教授は、「会計は会社の事業の
ひとつの側面を表しているに過ぎない。
本来、会社は『ひと』の論理で動いて
いる。
だから、会計を習う人は、ひとの論理、
すなわち組織論も習っていなければ、
なぜ『かね』がこのように動いている
のかということを理解できない」と
ことあるごとにお話しされていました。
そこで、私はその教授から、組織論も習う
ことになりました。
そして、会計を専攻した人が目指す職業は
公認会計士や税理士だと思われると思うの
ですが、前述のように、組織論を習った
こともあり、経営コンサルティングを
仕事にしようと考えました。
ちなみに、「かねの論理」と「ひとの
論理」の関係については、小職の新刊、
「図解でわかる経営の基本いちばん
最初に読む本」に詳しく記載してあり
ますので、ご関心のある方はお手元に
取り寄せていただけると幸いです。
話しを戻すと、会計の専門家は、おかねの
論理だけで会社を見てはいけないという
ことが、私の信条となっているという
ことです。
ところが、その後、私は、会計はあなどれ
ないとも考えるようになりました。
会計に関する学習を進めていくと、対象と
なる事業に対応して、さなざまな工夫が
凝らされています。
例えば、ホテル業界には、独特のユニ
フォーム・システムという会計基準が
あります。
(ユニフォームとは、制服の意味では
なく、「統一の」という意味です)
ホテルは、ホテルの建物の所有者が、
別の会社に運営を委託することが多く、
その結果、ホテルの運営者に責任のない
費用である減価償却費は、ホテルの
損益計算書の営業利益には反映され
ません。
すなわち、一般の会社と異なり、
営業利益はホテル運営者の責任となる
利益と費用で計算されるということに
なります。
また、別の例では、棚卸資産の価額の
算出方法も、事業の内容によって様々
です。
極端な例では、少額の商品をたくさん
売っている小売業は、直接、仕入額を
把握するのではなく、売価から逆算
して、それを仕入額としています。
しかも、その商品は、異なる種類の
商品であっても、類似性があれば、
ひとまとめにして仕入額を計算する
ことが許されています。
もうひつ例をあげると、建設会社では、
請負額が10億円以上、期間が1年以上
などの条件を満たしている工事は、
その建物が販売されていなくても、
建設会社の決算時に、完成の度合いで
収益が得られたという前提で計算を
行います。
ここまでさまざまな事業の会計について
述べてきましたが、この記事は、会計の
規則の説明が本旨ではないので、事業
ごとの会計の特徴についての記載は、
ここまでとしたいと思います。
ところで、私が銀行で働いているときは、
このような会計についてむさぼるように
学びました。
その結果、多くの事業の特徴について
学ぶことができました。
もちろん、会計だけで事業のすべてを
学ぶことはできませんが、このような
事業ごとの特徴を学ぶことは、私に
とって、会計を学ぶための大きな
動機となりました。
また、このようなことを学んだことが、
いま、コンサルタントとして、様々な
業種のコンサルティングを行える
ようになったのだと思います。
今回は、私の考える会計の面白さに
ついて書いてみましたが、これが、
会計を苦手と考える方にとっての、
会計を学ぶきっかけのひとつに
してもらえればと思います。