外部性とは、経済学の用語で、会社の事業
活動の及ばない外部に影響を与える性質の
ことです。
例えば、自動車メーカーは、自動車を提供
することで、自動車による便益を与える
ことができますが、その一方で、自社が
製造した自動車が出す排気ガスで、自社の
顧客以外の人にも悪い影響を与えてしまい
ます。
ところで、民間会社ではありませんが、
地方公共団体である市役所にとって、
「市民」には外部性という考え方が
あてはまりません。
その市に住む人は、その市の市民になり
ますので、市役所提供するサービスは
すべて市民に及ぶことになります。
一方、民間会社は、自社の近隣に住んで
いる人は、すべて顧客にする必要はあり
ません。
取引をする上で、採算がとれなければ
自ら取引をやめることができます。
よく、「市役所は税金で運営できるから
楽でいい」というような批判をする人を
見ることがありますが、その一方で、
行政機関は、外部性がないことから、
すべての市民に対して等しくサービスを
提供しなければならないという義務が
あります。
そういう面で、民間会社は、採算の合う
人だけを顧客にすればよいわけです。
むしろ、採算の合わない取引をすると
いうことは、会社として避けるべきこと
でしょう。
これが、今回の結論のひとつです。
実はもうひとつお伝えしたいことが
あります。
というのは、最近の人口減少、特に労働力
人口、若年者人口の著しい減少は大きな
問題となっています。
その結果、従業員を採用したいという
会社にとっては、労働市場の外部性が
及ぶ範囲が縮小している、すなわち、
採用者を選べる余地がなくなりつつあると
言えるでしょう。
いわゆる、就職氷河期は、採用する側が
優秀な従業員を選ぶ余地があり、その
ような麺では、外部性の及ぶ範囲が
広かったといえます。
しかし、大卒求人倍率が1.79倍と
言われている時代では、大卒者を始め
就職希望者を選ぶ余地はなく、採用
活動は、すべての就職希望者を対象に
することになります。
また、インターネットが普及したことに
よって、事業者と顧客の情報格差が
縮まっていることも実質的に外部性が
及ぶ範囲を狭くしていると私は考えて
います。
例えば、長時間労働や賃金不払いなど
労働関係法令に違反した疑いで送検された
企業などの一覧、いわゆるブラック企業の
リストが厚生労働省から公表され、多くの
人が知る所になりました。
インターネットが普及していない時代で
あれば、事業者側の情報はなかなか広まり
ませんでしたが、現在は、ポジティブな
情報もネガティブな情報も、一瞬で多くの
耳目に触れるようになりました。
ふたつめの結論として、直接、取引がない
顧客、すなわち、かつての考え方での
外部性の及ぶ範囲である顧客も、あたかも
自社の取引先のように自社を評価する
時代になっているということも意識しな
ければならないと思います。
しかし、これは、決してネガティブに
考える必要はないと思います。
最近は、SNSなどで、優れた会社の
評判を聞きつけ、遠方から訪れる顧客も
増えています。
例えば、日本に来る外国人観光客は、
外国人同士のSNSで評価の高い観光地や
施設に訪れるようです。
経営環境の変化に対応することが、結果
として持続する会社の条件といえるの
でしょう。