鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

巧遅は拙速に如かずとはいうものの

先日、イエローハット創業者の鍵山

秀三郎さんのメールマガジンに、

次のような内容が書かれていました。


「かつて人間は、相当な努力や年月を

積み重ねないと自分の望むものを

手に入れることができませんでした。


手に入れるための手順、手続き、年月、

辛抱がどうしても必要でした。


では、そうした努力がムダであったか。


けっしてムダではありませんでした。


努力を重ねる過程で、私たち人間は

暗黙の規範、規律、秩序を身につける

ことができたではありませんか。」


これは、拙速を戒める示唆であり、

急がば回れを奨励する言葉だと

思います。


そして、鍵山さんが述べるからこそ

重みがある言葉となるのであり、

もし、私のような途上にあるものが

述べても、「それは、わざわざ

言われなくても分かっている」と

言われてしまうことでしょう。


ところで、拙速については、考えて

いただきたいと思っていることが

あります。


創業してから事業がうまく軌道に

乗らないという方の共通している

原因に、あまり計画的でないと

いうことがあると思っています。


別の言い方をすれば、もう少し

慎重に計画を練っていれば、

失敗を避けられたであろうという

事例をしばしば見てきました。


このように述べると、「十分に

準備をすれば、それだけ失敗も

避けられるのは当然だ。


それに、準備はいいことだからと

いって、準備にばかり時間をかけ

過ぎれば、ビジネスチャンスを

逃してしまう」と、お考えになる

方もいるでしょう。


私もそのように考えるのですが、

私が指しているのは、注意に

欠けた拙速のことです。


例えば、借入が必要であることが

分かっているにもかかわらず、

銀行に融資の申し込みをしない

うちに事業を始めてしまったり、

従業員がそろわなければ事業が

回らないのに、設備を揃えて

しまったりするという人から

相談を受けたことがありました。


このようなことが起きてしまう原因

としては、自分の力量を過信して

しまっているということだと私は

考えています。


もちろん、事業にはリスクをともなう

訳ですから、慎重になり過ぎることも

問題ですが、最近は、少ない負担で

会社を設立できたり、起業を支援する

会社や専門家が増えて来たことも

このような、拙速すぎる起業家を

増やしていると私は考えています。


結論としては、会社を設立したり、

事業を始めることは容易ですが、

事業を続けるための能力は、一朝一夕

では身に付きません。


これは以前にも述べたことですが、

起業はゴールではなく、スタートで

あるわけですから、起業にあたって

検討すべきことは、起業するまで

何をするかというよりも、起業後に

きちんと事業を継続できるかどうか

ということでしょう。

 

 

 

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