[要旨]
経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、資金繰の苦しい会社がそれを改善するためには、まず、顧客に対して売上代金の前払いを依頼することが大切だそうです。もちろん、商品の競争力が低ければ、代金前払いには応じてもらえないので、前もって商品の競争力を高めなければなりませんが、そのための活動のひとつとして、板坂さんは、社長がブログで毎日情報発信をするとよいということです。
[本文]
今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、「儲かっている会社は、仕事をする前にお金をいただき、貧乏会社は仕事をしてからお金をいただいている」という原則があるそうですが、これは、手元資金に余裕のある会社は、経営者の方が事業活動を俯瞰し、より適切な経営判断ができるようになるからと考えられるということについて説明しました。
これに続いて、板坂さんは、資金繰改善のために、顧客へ前払いを依頼することが大切と述べておられます。「お金の流れ込む仕組みを作るのも社長の仕事だ。お金に追われる中小零細弱小家業の社長さんに、『一度でも取引先やお客さんに、“前払い”を依頼したことがあるか?』と聞くと、誰もが首を横に振る。『業界慣習で後払い』、『そんなことを言ったら、お客さんが逃げていく』という。
しかし、本当は、そう言える自信がないだけ。もちろん、客離れに対する恐怖もあるが、その奥には、『自分自身が否定されるような気がして怖い』という自意識があり、それが自分にブレーキをかけているのだ。とはいえ、今のままでは確実に資金繰りが悪くなり、商売が先細りしていく。どうせダメになるなら、思い切って前払いを依頼しよう。全額が難しければ、半金からだ。それもダメなら、前払いを可能にする商品やサービスを考え出そう。頼むのも、考えるのも、元手はかからない。頭を下げながら、知恵も絞る。これを徹底すれば、お金が入ってくる流れを整えることができる。
私が、ブログを活用して社長の考えを発信するように勧めているのはこのためだ。好きでやっている商売。そこに込めた思いを発信し続けることで、『先にお金を払ってでもあなたから買いたい』というお客さんが現れる。『あなたでお願いします、ほかより高いけど』と、向こうからお願いしてくるような商売をすれば、『先に現金払いなんですけど、大丈夫ですか?』と言えるようになる。(中略)『買ってください』と頼む商売から、『あなたから買いたい』と言われる商売へ。これがお金の流れ込む仕組みを持っている会社に共通する、絶対不変のルールなのだ」(38ページ)
板坂さんは、「顧客へ前払いを依頼してみよう」という言い回しをしていますが、これは、「自社商品を、顧客が前払いをしてでも買いたいと思えるくらい、競争力を高めるべき」ということだと思います。これに対して、「それができればとっくにやっている」と答える経営者の方も多いと思います。ところが、私のような、部外者である経営コンサルタントから見ると、多くの会社では、まだやれることをやり切っていない、むしろ、やり残していることの方が多いと感じます。例えば、板坂さんも、「私が、ブログを活用して社長の考えを(年間365日)発信するように勧めているのはこのためだ」と述べておられますが、ブログで情報発信する経営者の方は少数です。
もちろん、ブログを書けば、必ず商品の競争力が高まるというわけではありません。しかし、その効果は皆無ではありません。正直なところ、商品の競争力を高めるということは、私自身も苦心しています。「コンサルティング」という商品の競争力を高め、、さらにそれを事前に納得してもらうということはとても難しいことです。そこで、板坂さんが実践しておられるように、毎日、情報発信をするといった、限られたことしかできません。繰り返しになりますが、だからといって、毎日の情報発信で劇的な改善があったかというと、現時点ではそのようなことはありません。
でも、もし、これをやっていなかったとしたら、現状よりもっと悪い状況にあったと思っています。話を戻して、自社商品の競争力を高めるということは、一朝一夕では実現せず、かつ、労力を要することです。しかし、現在の活動を変えなければ、資金繰が苦しい会社は、それが続いたり、または、さらに悪化します。その改善の方法は、ブログを書くことだけではありませんが、とにかく、競争力を高めるために、何らかの活動を始めなければ、現状を抜け出すこともないということを、改めて感じました。
2024/5/12 No.2706