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小売業の会社では、現金での売上が多いことから、資金繰中心の管理が行われることが多いようです。しかし、そのような管理だけでは、資金繰の安定化や、より高度な事業展開を実践しにくいので、専門家の助言などを活用することが大切です。
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先日、山梨県の地場スーパー、やまとの元社長の小林久さんに、Podcast番組にご出演いただくことになり、リモートでお話をお伺いし、音声を収録しました。ちなみに、スーパーやまとは、2017年に信用不安から事業を停止せざるをえない状況になり、自己破産を申請しました。そこに至るまでの経緯などは、小林さんのご著書、「続・こうして店は潰れた」に詳しく書かれています。
話を戻すと、小林さんのお話は、ひとつひとつ心を打つものでしたが、特に、多くの経営者の方の参考になると思われるものとして、小林さんご自身の分析による、会社が倒産した原因をご紹介します。そのひとつは、「社内に財務の専門家を置かず、日銭商売のやり繰りに甘えて、基本的な改革が遅れたこと」です。会社は、資金繰さえ維持できれば、半永久的に継続することができます。
スーパーマーケットは、ほぼ、現金商売なので、小林さんご自身が指摘しているように、売上さえ上げることができれば、事業を継続できると考えられがちです。しかし、日々の資金繰管理が中心の管理では、事業が継続できるかに重きが置かれているので、資金繰をより安定させるための対策や、ライバルに差をつけるための新たな事業を実施するための資金調達などは、なかなか着手できず、長期的には競争力が弱まってしまいます。
そこで、そのような状況を改善するためには、資金繰管理に加えて、自己資本を充実させることための精緻な収益管理や、資金調達戦略を立案し実行することなどの対応が必要です。とはいえ、現実的な問題として、一歩進んだ財務管理は、中小企業ではなかなか実践できない状況にあることも多いと私も感じています。財務管理に詳しい人材を、専門に雇用することはなかなか難しいでしょう。
そこで、顧問税理士事務所の方に、オプションで財務管理に関する支援を依頼しても、財務分析まではできるもののビジネスに関する助言までをできるという事務所スタッフの方はあまり多くなく、なかなか思うような助言をしてもらうことができないという場合も少なくないようです。
そこで、財務管理に関して、適切な助言が欲しいという方は、セカンドオピニオンを提供している税理士事務所や、小職のような中小企業診断士に、財務診断をしてもらうことをお薦めします。経営環境の厳しい時代こそ、外部の支援を上手に活用することが、より大切になってきているということを、小林さんのお話をきいて、改めて感じました。