鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社の資金が残らない理由(2)

[要旨]

資金繰表を作成しない会社は、資金管理が成行となり、資金不足が起きるときも、その場になって初めて把握できることになります。資金残高の見通しは、前もって完全に把握はできないものの、自社の目指す方向に近づけるための、能動的な活動ができるようにするために、重要なツールです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、認定事業再生士の山本誉さんのご著書、「手元資金を増やす中小企業の経営改善の進め方」を拝読して気づいた点をご紹介したいと思います。前回は、山本さんが考える、中小企業の資金繰が悪化する理由のうちのひとつめとして、事業計画書がないということをご紹介しました。今回は、2つめの、資金繰表について説明します。

資金繰表は、将来の資金残高の見通しを記載するものです。山本さんは、資金繰表を作成していない会社は、資金不足を招くとご指摘しておられます。その理由は、資金繰予定表がないと、資金残高は、その日にならないと分からないことから、事業管理が成行になってしまうためだとご説明しておられます。これに対し、資金繰表を作成しない経営者側は、資金繰表を作成しても、必ずその通りになる訳ではないので、作成する意味がないと考えているのでしょう。

でも、そのような理由で資金管理を怠ると、資金管理が受動的になり、販売相手の都合などで資金不足が起きてしまいやすくなます。一方、資金繰予定表があれば、必ずしもそのみ込み通りにならないとしても、予定とずれが起きたときに、自社の目指す状態にして行くための対策を能動的に行うことができます。もし、融資が必要になる場合も、資金繰予定表があれば、資金不足になって初めて不足が分かるということにはならず、不足が起きることを前もって見込むことができます。

そして、これは、山本さんではなく、信用不安によって破産した山梨県の地場スーパーの元社長の小林久さんがご指摘していたことなのですが、小林さんも、かつて、スーパーの事業が現金商売であるため、資金管理はしていなかったそうです。小林さんのいう資金管理とは、日々の支払いの帳尻は合わせではなく、長期的な視点からの資金管理のことです。すなわち、小林さんは、日々の資金決済を行うことさえできればよいとしか考えていなかったそうです。

そのため、自社をどう発展させていくかという、事業を俯瞰した視点での資金管理はしていなかったことから、経営環境の変化への対応ができない原因となり、それが破産の要因のひとつになったとお話しておられました。したがって、資金繰表の作成は、単なる予想のために作成するのではなく、事業運営が受動的ではなく能動的に行えるようにするためのツールとして考える必要があるということです。

2022/3/9 No.1911

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