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会計事務所の多くは、財務会計の処理は得意であるものの、資金繰表の作成を依頼しても、それを受けてもらえないこともあります。それは、会計事務所は、資金繰表などの管理会計のカテゴリーの資料は、あまり行っていないからです。したがって、資金繰表は、会社が独力で作成できるようにすることが望ましいでしょう。
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今回も、経営コンサルタントの篠崎啓嗣さんのご著書、「社長!こんな会計事務所を顧問にすればあなたの会社絶対に潰れませんよ!」の内容について、私がとても共感した部分についてご紹介します。篠崎さんは、「会期事務所は、会計取引の仕訳によって、顧問先の貸借対照表と損益計算書を作成するものの、これらは財務会計の手続きであり、管理会計の成果物である資金繰表の作成は苦手」と述べておられます。
私は、すべての会計事務所が、顧問先の資金繰表の作成を苦手としているとは考えていませんが、確かに、会計事務所は、顧問先の税務申告が専門であり、それ以外の作業の依頼を受けることは、あまり多くないということも事実だと思います。また、会計事務所の使っている会計ソフトの中には、顧問先の過去の資金繰表を作成する機能もあるようですが、恐らく、会計ソフトの資金繰表の作成機能は、1か月単位でしか作ることができず、また、顧問先の事業の状況に合わせたアレンジも難しいものになっているでしょう。
さらに、もっと致命的なことは、顧問先の将来に向けての資金繰表を作成する機能のある会計ソフトも、恐らく、存在しないのではないかと思います。それは、ある意味当然のことで、前述のように、会計事務所の本来の仕事は、顧問先の税務申告だからです。そこで、篠崎さんのご指摘のように、会計事務所では、顧問先の資金繰表を作成することはあまり得意ではないと、私も感じています。
ただ、誤解のないように書き加えておきますと、会計事務所の税理士の方と職員の方は、会計のプロフェッショナルですから、資金繰表作成などの、管理会計の資料を作成する能力は、間違いなくお持ちのはずです。ただ、管理会計の資料の作成は、慣れていないというだけのことだと思います。むしろ、私から見れば、税務申告の資料の作成の方が、管理会計の資料の作成より、高度なスキルが求められていると感じています。
したがって、このような状況から鑑みて、資金繰表の作成は、最終的には、会計事務所にはあまり頼らず、自社で作成するスキルを身に着けることが得策でしょう。しかも、自社で作成できれば、迅速に資金繰を把握できる上に、銀行へも、独力で説明が可能になります。ただ、経営者の方が、会計を苦手という場合は、篠崎さんや私のような専門家に相談し、会社の事業に合わせた資金繰表のフォーマットや、その作成手順だけ、ご相談していただき、それができてから、独力で作成するということをするとよいでしょう。