鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

資金繰表はなぜ作成されないのか(2)

[要旨]

月次の資金繰予定表を作成するには、過去の月次損益計算書から趨勢をつかみ、そこから月次計画損益計算書を作成する必要があります。ところが、経営者の中には、会計記録に要するコストを渋る結果、過去の月次損益計算書の内容が不正確になり、月次計画損益計算書の作成に労力や時間を要することになってしまいがちです。


[本文]

前回は、資金繰予定表は、売上計画と一緒でなければ作成できないことから、資金繰表のスキルがあっても、売上計画がなければ、それ作成することになるため、これがネックとなって資金繰表はなかなか作成されないということを述べました。今回は、これについて、さらに深堀りして行きたいと思います。資金繰予定表(月次)の作成には、計画損益計算書(月次)が必要になりますが、計画損益計算書を作成するには、過去の損益計算書のおおよその趨勢を把握できなければ、将来を見込むことも難しくなります。そこで、ある程度、具体的には、過去36か月分程度の月次損益計算書が必要になります。

ここで、過去の損益計算書の入手は容易と考える方も多いと思いますが、現実には、別の面での問題があることは少なくありません。というのは、損益計算書の内容が適切でないことは珍しくないのです。例えば、売上原価である費用が販売費及び一般管理費に計上されていたり、収益認識基準(売上を計上する基準)が誤っていたり、その会社の独自の勘定科目が使われていたりすることがあるため、それらを正しく修正するための作業が必要になることもあります。当然、この作業は、もはや、資金繰表作成とは別の作業と言えます。

要は、資金繰表作成の前に、日常的な会計記録が不正確であったり、不適切であったりすることが、計画損益計算書や資金繰表を作成する障害になっています。また、来月からの資金繰予定表を作成しようとしても、完成している最新の月次損益計算書は、2か月前や3か月前のものであったりすると、未完成の月の分から作成しなければならなくなります。このような状態になってしまう原因としては、経営者の方の会計記録への関心が低いことがあげられます。ありていに言えば、会計記録はできればやりたくない邪魔な作業であり、最低限のことをできるだけコストをかけずにすませたいと考えていると、前述のような状態になってしまうのでしょう。

本当は、正確な会計記録を行うことは、会社の事業を迅速、かつ、効率的に発展させるために、とても重要な作業であり、そのためには適切なコストをかけなければなりません。むしろ、会計記録にコストをかけなかったことによって逃してしまったかもしれない収益は、きちんとした会計記録を行うために要するコストを上回っていると考えるべきではないでしょうか?繰り返しになりますが、経営者の方の会計に関する意識が低いことが、きちんとした会計記録が行われないことになり、そのことが、資金繰表の作成の妨げになっていると、私は考えています。

2022/4/12 No.1945

f:id:rokkakuakio:20220412024333j:plain