鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

資金繰表はなぜ作成されないのか(1)

[要旨]

資金繰予定表を作成するには、まず、スキルが必要です。しかし、スキルを身につけても、売上計画がなければ、資金繰予定表も作成できません。資金繰予定表は、売上計画と一緒でなければ作成できないことも、あまり作成されていない要因のひとつと考えられます。


[本文]

先日、Twitterの新しい機能である、参加者同士がリアルタイムで会話できるスペースに、私も参加し、何人かのあるコンサルタントの方たちと会話をしていたのですが、そこで、資金繰表が話題になったので、その内容についてシェアしたいと思います。その内容とは、事業を安定的に継続したり、銀行から支援を受けたりするために、中小企業は自社の資金繰表を作成し、自らの資金管理や銀行への説明を行うことが大切であるにもかかわらず、資金繰表を作成している会社はとても少ないということでした。(なお、資金繰表は、過去の資金繰の経緯を示す資金繰実績表と、将来の資金繰の見込みを示す資金繰予定表がありますが、ここでは、特にことわりのない限り、資金繰表は資金繰予定表を指すものとして説明して行きます)

では、なぜ、多くの中小企業は資金繰表を作成しないのでしょうか?そのひとつは、スキルがあまり高くないということです。とはいえ、資金繰表の作成方法は、多くの書籍に書かれてもいることから、それらの書籍を読めば、ある程度のスキルが必要であるとはいえ、中小企業でも作成できないこともありません。それでも作成されない原因としては、経営者をはじめとして管理者の方たちが、資金繰表に関心がないということもありますが、それ以外の原因として、資金繰表を作成するためのデータが揃っていないということがあげられます。

そのデータとは、具体的には、主に、売上計画(月次での計画損益計算書)です。今月からの資金繰予定を立てる場合、前月までの販売状況を集計すれば、一般的には3か月程度先までの売上金入金見込額は把握できますが、1年先までの資金繰表を作成しようとすれば、1年先までの販売額が分からなければ作成できません。もちろん、3か月先までの資金繰までは、ほぼ、確定しているということで、今後3か月間の資金繰表は作成できることになります。しかし、3か月間の短期間の資金繰表だけでは、銀行は、3か月後の資金不足がどれくらいになるかが分かるだけであり、それだけでは融資審査の資料としては、あまり重要なものとはなりません。

そこで、銀行から、「こんご12か月間の資金繰表を作成してください」と依頼を受けた会社が、こんご12か月間の売上計画を立てていなければ、資金繰表を作成する前に、まず、12か月間の月間計画損益計算書を作成し、それが完成してから。それに基づいて資金繰表を作成することになります。そこで、このような労力がかかるために、資金繰表の作成を断念してしまうことは少なくないと思います。この続きは、次回、説明します。

2022/4/11 No.1944

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