鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社の資金が残らない理由(3)

[要旨]

中小企業経営者の方の中には、会計的な知識が乏しいために、資金管理のための適切な活動ができないことがあります。もちろん、経営者の方が、会計に関して高い専門性を持つ必要はありませんが、経営者は、ひと、もの、かねの経営資源を管理する以上、ある程度の会計の知識が必要です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、認定事業再生士の山本誉さんのご著書、「手元資金を増やす中小企業の経営改善の進め方」を拝読して気づいた点をご紹介したいと思います。前回は、山本さんが考える、中小企業の資金繰が悪化する理由のうちの2つめとして、資金繰表が作成されていないということをご紹介しました。今回は、3つめの、「決算書が読めない」と、4つめの「利益と現金の混同」について説明します。

山本さんによれば、事業活動の目的は利益を得ることであるにもかかわらず、経営者にお会計の知識がなければ、目的を果たすための最適な活動やその管理を実践することは不可能ということです。例えば、固定資産を取得したときに支払った現金は、そのまま手許の資金を減少させます。でも、手許資金が減っても、その減少分のすべてが利益を減少させるわけではありません。このことを理解するには、企業会計原則のひとつの、費用収益対応の原則を理解していることが必要です。

この原則がどういうものかは別として、会計原則を始めとして、会計に関する知識を理解していなければ、資金管理をすることはできず、適切な活動もできないことになります。それが会社の資金不足を招く原因のひとつになっているということです。ここで、経営者は、会計に関して専門性を持たないといけないのかという疑問を持つ方も多いと思います。これに関しては、意見が分かれるところなのですが、私は、高い専門性を持たないまでも、山本さんと同様に、経営者の方は、簿記2級程度の知識を持つべきだと考えています。

というのも、経営者は、ひと、もの、かねの3つを経営資源を管理する役割を担っています。ですから、経営者としての専門性を発揮するには、これらの経営資源について、ある程度の知識が必要であるということは、言うまでもありません。(もちろん、必要な知識は、「かね」だけでなく、「ひと」や「もの」についても、知識が必要ということです)したがって、会計の専門家になる必要はないとしても、経営者としての資質を高めるために、会計を学ぶという考え方を持つことが大切です。

2022/3/10 No.1912

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