鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

採算は経営者の意志の表れ

[要旨]

稲盛和夫さんは、業績は結果でなく、経営者の意志が反映されたものであると考えているそうです。なぜなら、売上を増やすことも、経費を抑えることも、経営者の意志でできることであるからだそうです。したがって、経営者は、会社の業績について言い訳することはできないと考えているそうです。


[本文]

今回も、前回に引き続き、稲盛和夫さんのご著書、「京セラフィロソフィ」を拝読して、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、稲盛さんが京セラを立ち上げたときから、同社では、翌月10日までに月次決算を作成し、事業活動の改善に活用することで、会社を拡大してきたということを説明しました。これに続いて、稲盛さんは、業績は、事業活動の結果ではなく、経営者の意志でつくられるものであると述べておられます。

「経営というのは、経営者の意志で行っていくものです。お豆腐屋さんを例にすると、今まで、毎朝50丁作っていた豆腐と、『きょうは、一つ頑張って60丁つくろう、その代わり、朝は1時間早く起きてやろう』というように、自分の意志で、その日の売上をつくることができるのです。そして、なるべく経費を抑えるために、大豆から豆乳を作るのに、今まで手で絞っていたのを、『万力を使って、もう少しきつく絞り、少しでも余計に豆腐を作ろう、大豆の消費量を減らそう』というようなこともできるわけです。そうい意味で、採算というのは、つくることが可能なのです。

決して、自分勝手にでたらめな数字を並べるという意味ではなく、売上を増やすことも、経費を抑えることも、経営者の意志で可能になるのです。経営を行なっていく上で、これは非常に大事なことです。例えば、『先月はたいへん悪い決算で、利益が出ませんでした』というような場合は、利益が出ないような経営を、経営者自身がやったのです。『いえ、私は努力したのですが、なぜかこうなったのです』というようなことは通りません。採算というのは、良かれ悪しかれ、すべて経営者の意志の表れなのです。数字というものを目の前にしたとき、経営者は、自分自身に対して、絶対に言い訳ができないものなのです」(493ページ)

稲盛さんの、「売上を増やすことも、経費を抑えることも、経営者の意志で可能になる」というご指摘も、至極、当然のことと思います。ところが、これは頭でわかっていても、なかなか実践が難しいということも現実だと思います。私自身もそうですが、「今月は、もう少し売上を増やそう」、「この仕事は、もう少し納期を早くしよう」、「この製品の材料は、もう少し工夫して節約しよう」といった努力は、実践したほうがよいことは分かっていても、「意志」が弱いと、それをなかなか継続させることができません。そこで、稲盛さんは、月次決算を重視したいたのだと思います。

毎月の業績を確認すると、「今月は、先月よりも業績が改善したので、さらに、この努力を継続しよう」という気持ちになることができます。月次決算は、改善策の迅速な実行を行うためのものですが、経営者の改善活動に対するモチベーションを維持する効果もあると考えられます。京セラが成長してきた要因には、稲盛さんもご指摘しておられるように、改善を積み重ねてきたことであることに間違いはありませんが、それを継続することができたのは、月次決算でモチベーションを維持する効果もあったからではないかと、私は考えています。

2023/11/22 No.2534