鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

採算が上がるのは制度ではなく人の思い

[要旨]

京セラの事業の急成長の要因は、アメーバ経営会計学などの、緻密な経営管理システムであると言われることがあります。しかし、稲盛さんは、良い採算制度があるから採算が上がるのではなく、現場の人たちが採算を挙げようと思うから上がるとご指摘されておられます。そして、従業員の方に意欲を持ってもらうために、経営者は、従業員の方たちに、直接、語りかける活動が重要であると述べておられます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、稲盛和夫さんのご著書、「稲盛和夫の実学-経営と会計」を読んで、私が気づいたことについて述べます。これまで、稲盛さんの本を読んで来て、その内容に、それぞれ、なるほどと感じることばかりだったのですが、そうであれば、日本中の会社が、京セラのような仕組みを採り入れることによって、業績を伸ばすことができると考えることができます。

事実、第二電電(現在のKDDI)や日本航空など、稲盛さんが経営にか関わった会社も、業績を高めています。でも、稲盛さんの考え方は広く知られている一方で、業績を高めることができないでいる会社も少なくないことも事実です。その要因について、稲盛さんは、従業員の方に魂を吹き込むことが欠かせないということを述べておられます。

「京セラ急成長の要因は、高度な技術力と、アメーバ経営会計学などの、緻密な経営管理システムであると言われることがある。しかし、技術力にしても、経営管理システムにしても、このような人の心をベースにした経営風土があって、初めて機能するということを明記する必要がある。どんなに素晴らしい技術を開発しても、どんな合理的な経営管理システムを駆使したとしいえも、会社や社員に魂を吹き込むのは、やはり、経営者でなければならない。

したがって、時間当たり採算システムを運用するにあたっても、一番大切なことは、経営者が、社員から信頼され、尊敬されていることであり、そのような経営者が自ら現場に行き、現場で担当する人たちに、直接、仕事の意義や目標などを話していくことなのである。すなわち、経営者自らが職場の会議やコンパを通じて社員と触れ合い、自分の思いを直接伝えていくことが必要なのである。良い採算制度があるから採算が上がるのではなく、現場の人たちが採算を挙げようと思うから上がるのである。そのためには、経営者自身が、必要なエネルギーを現場の人たちに、直接、注ぐことが大切となる。私は、それを、『魂を注入する』と呼んでいる」(145ページ)

稲盛さんがご指摘しておられる、「良い採算制度があるから採算が上がるのではなく、現場の人たちが採算を挙げようと思うから上がる」ということは、多くの人が理解されると思いますが、経営者として、従業員の方にそのように働きかけることは、ついつい忘れられがちなのではないかと思います。また、実際に働きかけを行っているとしても、従業員の方に採算を高めようという意欲を持ってもらうことも、容易ではないと思います。

これは、私自身にも言えることですが、やはり、経営者の方は、人徳が問われる部分があると思います。だからと言って、「会社の業績を高めるためには人徳が必要」と言うだけであれば、あまりにも短絡的過ぎますし、多くのビジネスパーソンは、最初から高い人徳を持っているとは限らない訳ですから、少しでも従業員の方に意欲を持ってもらえるような働き方を続けていくことが大切だと、私は考えています。そういった経営者の姿勢は、直ちには結果が得られないかもしれませんが、決して無駄な活動ではないと思います。

2022/12/13 No.2190