鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

組織文化は心理的エンジン

[要旨]

経営コンサルタント遠藤功さんによれば、組織風土とは、企業が危機的な状況に陥らず、安定した経営を行なうためには不可欠な、『心理的基礎』であるのに対し、組織文化とは、競争力を高めるための『心理的エンジン』だそうです。したがって、経営者の方は、組織風土だけでなく、組織文化の涵養にも注力しなければ、会社の事業の競争力が高くならないことに注意が必要です。


[本文]

今回も、遠藤功さんのご著書、「『カルチャー』を経営のど真ん中に据える-『現場からの風土改革』で組織を再生させる処方箋 」を読んで、私が気づいたことについて説明します。前回は、赤城乳業では、『何でも自由に言える会社』を目指し、自由闊達な組織風土を醸成して業績を高めているということを説明しました。これに続いて、遠藤さんは、会社が発展するためには、組織風土だけでなく、組織文化も重要であると説明しておられます。

「組織風土は、企業が危機的な状況に陥らず、安定した経営を行なうためには不可欠な、『心理的基礎』とも言うべきものである。健全な組織風土がなければ、企業が成長、発展することは不可能である。しかし、良い組織風土、健全な組織風土が、それだけで企業の競争力に直結するわけではない。組織が成功を収めるための前提条件とも言うべきものである。ただし、組織風土が劣化すると、成功どころか、企業を倒産に追い込みかねない大きなリスクとなる。(中略)

一方、組織文化は、各企業の成功体験をもとに培われたものであり、組織文化を形成し、高めることによって、企業の競争力優位に直結する。エクセレントカンパニーほど、組織文化にこだわり、デフォルメされた『強い組織文化』が形成される傾向がある。つまり、組織文化とは競争力を高めるための『心理的エンジン』とも呼ぶべきものであると言うことができる。(中略)実は、世界中のエクセレントカンパニーの多くは、組織文化にこだわり、独自の組織文化を形成することに成功している。(中略)その中でも、とりわけ有名なのは、グーグルだろう。

創業者のひとりである、サーゲイ・ブリンは、『グーグルは、社内に好ましい文化をつくり、社員にしっかりとした忠誠心を持ってもらい、仕事に対して満足感を感じてもらえるようにする』と語っている。そして、その具体的な姿として、『僕たちは、グーグルを大学みたいに運営しているんだ』と語っている。(中略)つまり、それぞれの社員が自分のやりたいテーマを持ち、グーグルという舞台で自由に研究し、互いに交流し、切磋琢磨しながら、成果を上げて行く。これこそがグーグルが大切にしている組織文化である」(101ページ)

遠藤さんは、「組織風土は心理的基礎」であり、「組織文化は心理的エンジン」と述べておられます。確かに、よい組織風土ができあがれば、従業員の方たちは働きやすくなりますが、それだけでは、成長の速度が速くなるわけではありません。そこで、モチベーションなどを高める組織文化があれば、成長の速度が高まるわけです。その組織文化の事例が、グーグルの「大学みたいな運営」ということでしょう。

ちなみに、遠藤さんは、日本の会社の組織文化として、トヨタの「改善文化」、サントリーの「やってみなはれ」、リクルートの「個の尊重」を挙げておられます。今回は、やや抽象的な考え方の説明でしたが、組織風土を改善するだけでは競争力は十分に高くならないので、経営者の方は、組織文化も涵養することが大切ということを認識する必要があるということです。

2023/9/26 No.2477