[要旨]
帝国データバンクの調査によれば、投資ファンド等(再生ファンドも含む)から出資を受けたにもかかわらず、倒産する会社が増加傾向にあります。従来は、ファンドから出資を受けている会社は、業績が回復すると判断されたと見られ、ポジティブな評価を受けていましたが、今後、当面は、そのような評価は控えることが無難でしょう。
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9月12日に、帝国データバンク情報統括部情報編集課長の阿部成伸さんが、ダイヤモンドオンラインに、ファンドが出資した企業の倒産に関する記事を寄稿しておられました。記事の概要は、2014年1月から2023年7月までの期間で、倒産(法的整理)した会社のうち、倒産時点、もしくは、それ以前のおおむね5年間で、投資ファンド等(再生ファンドも含む)の出資が確認できた会社の数は、258社だった。
これを、年別でみると、2014年の39社が最多であったが、2023年は、7月までで、すでに34件になっており、通年で2014年を上回る見通しだというものです。もちろん、「経営不振の企業にファンドが出資すると、意見は分かれるものの、一般的には『調査を経て再生の可能性があると判断された』として当該企業の評価や信用が大きく低下するケースは少ない」と考えられているのですが、今年は、それに反して、ファンドから出資を受けた会社の倒産が増加傾向にあるようです。
その理由については、「各ファンドは出資に至った経緯やその後の進捗・意向などについて原則公表しない」ので、推測するしかないのですが、その上で、阿部さんは、次のように分析しておられます。(1)2020年以降の世界規模のコロナ感染拡大の影響を受け、出資する企業の業績が著しく悪化したり、社会生活や企業活動の変化と定着などによって長年手がけてきた事業そのものの見直しが必要になったりした。(2)さらに昨年以降の急激な原材料価格の高騰や円安の進行は再生を断念する決定打となった。(3)そうした変化が短期間に次々と起こるなか、損失拡大をいち早く防ぐために素早くドライな判断(あえて倒産を選択する判断)を行った。
私も、阿部さんの分析は正しいと考えています。さらに、私が、理由をもうひとつつけ加えたいのですが、それは、コロナ禍で業績不振になった会社に融資をしていた銀行が、本当は、その会社を「倒産」させざるを得ないと考えていたとしても、そのような手法が多発すると、コロナ禍にあって、その銀行に悪い風評が出てしまうことは避けたいと考え、多少強引にファンドに出資をしてもらい、事業を継続させていたという例があったのではないかというものです。
そして、そのような会社は、出資を受けて事業を継続していても、潜在的に倒産するリスクがあることから、ここに来て、それが表面化してきたのではないかと、私は推測しています。もちろん、これらの分析は推測であり、客観的な根拠はないのですが、「ファンドから出資を受けた会社=業績の回復が見込まれる会社」とは、必ずしも言えなくなってきていることは、事実と考えることができます。したがって、しばらくは、ファンドの出資を受けていることは、その会社の信用に関して安心できる材料と考えないことが適切と言えるでしょう。
2023/9/16 No.2467