[要旨]
帝国データバンク(TDB)によれば、実質的に倒産状態である、いわゆるゾンビ会社が増加傾向にあります。その一方で、今後、政府の新たな金融支援は期待できないことから、自社がゾンビ会社になりつつある場合は、早い段階で、メインバンクか、事業再生の専門家に相談することが大切です。
[本文]
ダイヤモンドオンラインに、帝国データバンク情報部情報編集課長の阿部成伸さんが、ゾンビ会社の増加に関する記事を寄稿しておられました。ゾンビ会社とは、「実質的に倒産状態であるにもかかわらず、なお営業を継続している会社、対外的には、『支払うべきものを支払わない』債務不履行の状態が続いている会社、貸借対照表上の累積損失によって債務超過の状態にある会社などが該当、さらには、銀行融資の返済条件を変更、いわゆるリスケ会社や過剰債務を抱える非効率会社」を言います。
ただし、国際決済銀行がゾンビ会社を定義しており、それによれば、「3年以上にわたってインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ、設立後10年以上の会社」を指します。ICRとは、ICR=(営業利益+受取利息)÷支払利息で計算します。資金繰の苦しい会社は、他者に資金を融通していることはまずありませんので、受取利息はほぼ0ですから、ICRは、本業で獲得した営業利益が、銀行からの融資などの支払利息の何倍になっているかを示す指標です。
そして、ゾンビ会社の場合、それが1未満なので、仮に本業で利益を得ていても、支払利息がそれを上回り、赤字になっているということです。そして、帝国データバンクのデータベースで、ICRを把握している会社は約10万7千社あり、このうち、2020年度に、3年連続でICRが1未満の会社は、約11.3%の約1万2千社あるそうです。さらに、同社が経営実態を確認している会社数の146.6万社にその割合の11.3%を当てはめると、ゾンビ会社は約16.5万社になると推計されるそうです。
これは、2019年度の推計値の14.6万社から1割以上増加しており、このことは、倒産する会社の増加につながるということです。ただし、ここまでの内容は、具体的な数値は別として、コロナ禍のような、経営環境が逆風のときは、政府の金融支援によって、一時的に倒産会社は減少するものの、数年経てば、ゾンビ会社が増加し、そして、倒産数が増加するという状況は、特に、目新しいことではありません。
しかし、今後、新たな政府の支援策は行われないと、私は予想しています。それは、近年、金融庁は、銀行の融資相手との取引方針について、自主性を重んじつつあるからです。したがって、自社がゾンビ会社になる恐れがある場合は、早めにメインバンクや事業再生の専門家等にご相談することをお薦めします。これからは、すべての中小企業が救済の対象となるとは限らない時代になりつつあります。
2022/8/13 No.2068