[要旨]
経営コンサルタントの杉浦央晃さんは、東日本大震災が起きた時、被災者の支援のために、ブログのヘッダー画像を作成し、それを1,000円で販売して寄付金を捻出しました。しかし、そのことが縁で、多くの起業家の人たちと知り合うことができ、現在は、ホームページ制作などの事業を展開できるようになりました。
[本文]
今回も、経営コンサルタントの杉浦央晃さんのご著書、「もし明日自分が死んだら-残された我が子に親父から伝えたい10の言葉」を読んで、私が気づいたことについて述べます。前回は、10個のみかんを3人で分けようとするとき、2人に4個ずつ分け、自分が2つ受けとると、他の人から1個譲ってもらえることがあるので、このような姿勢で他の人に接していると、自分の周りには自分と同じ考えの方たちが集まって来る傾向があるということについて説明しました。
これに続いて、杉浦さんは、「損をすること」の大切さについてご説明しておられます。杉浦さんが起業して間もないころ、東日本大震災が起きたのですが、被災者を支援したいという思いから、寄付金を送ろうと思い、その寄付金を捻出するために、ブログのヘッダー画像を作成し、販売することにしたそうです。そして、その画像を購入した人の中に、心理カウンセラーの心屋仁之助さんがおらた縁から、杉浦さんは心屋さんから心屋さんの本をいただいたそうです。
「そして、その時いただいた本が、また、僕の考え方を大きく変えることになるのです。その本には、『損をしなさい』と書いてあったのです。(中略)人に何かを与えるということは、つまりは自分が損をすると言うこと、この損をすることが、とても大切なのだと、改めて知ることになるのです。心屋さんのが言う損とは、何もお金ということだけではありません。時間の損や、情報の損など、自分の持っているものを、惜しみなく与えよと言われていたのです。ヘッダー画像を1,000枚作った時、僕は、1か月間、ほとんど寝ずに作業しました。
さらに、本来なら数万円から数十万円はもらえるものを、たったの1,000円にしとこと、そして、その売上を全額寄付したこと、よく考えたら、僕はすべて損することを選んでいたのです。その結果、僕は心屋さんをはじめ、多くの起業家のみなさんとお友達になり、たくさんんおお仕事をいただけるようになったのです。ここから、僕の画像を加工してお金をいただくと言う、新しい分野の仕事がスタートすることになったのです。そして、今では、ホームページの制作だけでなく、ブログ、名刺、チラシ、また、会社のロゴを作って欲しいという依頼までいただけるようになりました」
私も、杉浦さんのいう「損をすること」は大切だと思うのですが、実は、「よい結果をもたらす『損』」と、「よい結果をもたらさない『損』」の見極めは、とても難しいと思っています。例えば、起業してから事業展開がうまくいっていない経営者の方の中には、「当社は、社会的な貢献をしている結果、業績がまだ赤字になっている」という説明をする方がいます。
しかし、それは、本当に社会的な貢献の結果なのか、単に、経営者としての能力が十分でないために赤字になっているだけなのか、いぶかしいこともあります。そこで、私は、稲盛和夫さんが述べておられた、「動機善なりや、私心なかりしか」という考えにそっているかどうかで判断すればよいのではないかと思います。これは、稲盛さんが第二電電(現在の、KDDI)の起業を決断した時に、このように考えたそうです。
現在は、技術が発展し、日本国内では無料でも会話することができるようになりましたが、第二電電を起業した当時は、長距離電話の通話料は高額であったことから、安い通話料で長距離電話を利用できる仕組みは、社会のためになるという強い思いを稲盛さんは持っていたようです。だからこそ、巨大企業のNTTに対抗するという、大きなリスクをとる決断をすることができたのでしょう。そして、杉浦さんの事業も、「損をすること」で、周りの方に、決して私心で事業を行っているわけではないということが伝わり、そのことがすばらしい結果をもたらすことができたのだと思います。
2023/9/2 No.2453