鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

不祥事は必ず起きる前提で体制整備を

[要旨]

デロイトトーマツの調査によれば、過去3年間に52%の会社が不祥事を起こしています。すなわち、不祥事は起きるという前提で、経営者は管理活動を行う必要があります。そこで、定期的な配置転換、心理的安全性の確保など、不祥事を防ぐ対策をとることが強く求められています。また、近年は、不祥事に対する社会的批判は厳しくなりつつあることから、その必要性は、ますます高まっています。


[本文]

東洋経済の記者の梅垣勇人さんが、会社に不祥事が起きたあとの対応に関して、東洋経済オンラインに寄稿していました。梅垣さんの記事によれば、「デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが、上場・非上場企業の476社に調査したところ、過去3年間に何らかの不正行為や不祥事が発覚した企業の比率は52%」もあったそうです。また、2023年1月~7月に、不祥事の調査などのために、第三者委員会などを設置した上場会社は、30社以上にもなるそうです。

最近は、不祥事の発生にともなう、経営者の謝罪会見を、頻繁に目にするようになりましたが、残念なことに、不祥事が起きることは珍しくないということを、改めて感じます。ところで、梅垣さんが記事に書いているように、近年は、不祥事が起きた会社に対する、社会的な批判が大きくなっていることに加えて、SNSなどの普及によって、経営者の発言内容についても、大きな注目を浴びるようになってきています。このことは、場合によっては、不祥事による金銭的な損害を会社が補償するだけではすまされず、会社が事業を継続できなくなることにもつながります。

そこで、不祥事の発生にどう対応すればよいのかという相談が増え、「2000年代前半は10人程度だった担当者が、現在は100人規模を専任で抱えるほどになった」のでしょう。ところで、私がこの記事に注目したのは、中小企業(=いわゆる、オーナー会社)では、自社では不祥事が起きないと考えている経営者が少なくないということです。もう少し厳密に書くと、不祥事がまったく起きないとは考えていないとしても、不祥事の備えをしていないということです。具体的には、そのひとつの典型例は、定期的な配置転換を行わず、仕事を属人化してしまうということです。

もうひとつの典型例は、経営者はあまり意図していないことが多いようなのですが、悪い情報を報告しにくい環境、すなわち、心理的安全性が確保されていない環境をつくり、それを経営者が気づかずに放置してしまうことです。もちろん、不祥事が起きる原因は、これらだけではありませんが、上記の2つは、残念ながら珍しくないものです。そこで、私は、不祥事が起きた時に、もし、その原因が上記のようなものであった場合、それは、それを防ぐ対策をしなかった経営者に大きな責任があると思います。

一方、経営者とすれば、自分の知らないところで不祥事が起きたのに、なぜ、自分に責任が問われるのかと思うことがあるかもしれません。でも、不祥事は100%避けることはできません。そのことを前提に、不祥事が起きない仕組みをつくることが、経営者の役割だと、私は考えています。もちろん、経営者は、売上や利益を得るための活動を指揮する役割もあります。でも、現在は、不祥事に対する社会的な評価が厳しくなりつつあります。そうであれば、「攻め」に対する活動だけでなく、「守り」に対しても、経営者はバランスよく労力を注ぐことが賢明と言えるでしょう。

2023/8/24 No.2444