鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

規則ずくめの組織は機能しない

最近、中央官庁の不祥事が相次いで起きて

います。


そのたびに、外部専門家などによる調査が

行われ、その結果、いつ、誰が、どうして

規則を破ったのか、ということがわかりま

す。


そして、それに対して「ルール違反はけし

からん」と批判することは簡単です。


また、ルール違反を起こした側も、単に、

「これまでは安易に規則を破ってしまいま

したが、これからは規則を守るように十分

に注意します」という「うわべ」だけの改

善策を述べるだけでは、真に問題は解決し

たとは言えないでしょう。


「組織の専門家」である私としては、もっ

と深い考察が必要と思います。


そのひとつが、役所は規則ずくめになって

いるということです。


このような不祥事が起きると、私は、組織

論の大家、バーナードの提唱した全人仮設

を思い起こします。


全人仮設以外の仮説には、経済人仮説(人

は、金銭的なインセンティブで行動する)

や、社会人仮説(人は、人間関係を重視し

て行動する)などがありますが、全人仮設

は、人は物的要因、生物的要因、社会的要

因によって行動するという仮説です。


物的要因とは、例えば人にとって金銭的イ

ンセンティブで行動しますが、そのような

個々の動機で行動する要因をいいます。


生物的要因とは、人は個性があり、それぞ

れ個別に優れた能力を持っていたり、経験

で能力を高めたりしますが、ある程度限界

もあり、そのような生物的な要因によって

行動が制約される要因をいいます。


社会的要因とは、人は社会のなかでうまく

立ち回ろうとする欲求を持っており、その

ような欲求で行動することをいいます。


例えば、厚生労働省で、法令に基づかずに

統計を行っていた事件について考えてみる

と、大きな労力を要する統計作業を目の前

にして、上司や大臣に対して「法令どおり

には実施できない」とは報告できない(社

会的要因)があったり、もし「できないと

報告したら、昇給に影響が出る」(物的要

因)が働いていたのでしょう。


そして、法令をつくった側も、単に、法令

をつくりさえすれば、統計を確実に遂行し

てもらえるという前提で法令をつくってい

ると思いますが、キャパシティオーバーの

部署に対して、いくら規則をつくっても、

遂行してはもらえないでしょう。


このようなことは民間会社でもよく起きま

す。


例えば、会社の事業で法令違反が起きたと

きなど、社長は「部下には規則を守って仕

事をするようにと指示したが、それをちゃ

んと守ってもらえなかった」などという弁

明をするときがあります。


それは、字面としては正しいのですが、指

示を出したことに責任がある経営者として

は、結果責任だけでなく、その指示が遂行

されると判断したうえで指示を出す責任が

あります。


それを怠り、規則を守るように指示したの

だから、規則が破られたのは、部下が悪い

というだけであれば、経営者としては失格

でしょう。


話を戻して、役所は規則で動くと考えてい

る人が多いと思いますが、公務員も生身の

人間であり、全人仮設の観点からも、きち

んと法令通りの行政が遂行されているかど

うか、管理者は管理する必要があるという

ことが、今回の記事の結論です。

 

 

 

 

 

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