鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

規則で電話は貸せない

[要旨]

多くの方は、コミュニケーションは重要と認識されつつも、疎かにされることは、しばしば起こります。特に、命令や規則は、表面的に理解せず、人間的な接し方ができるようにするスキルが大切です。


[本文]

前回、同じ指示を出したり、真逆の指示を出したりしないよう、リーダーは注意をしなければならないと述べました。しかし、指示については、それを受ける側の部下も気をつけなければならないということは、言うまでもありません。私の経験を述べると、かつて、私が勤務していた銀行では、6か月に1度、支店ごとに会議を開き、6か月間の活動方針や目標の発表をしていました。その方針発表の会議で、あるとき、支店長が、冒頭で次のように話をしたことがあります。

「前任地の支店でのことだが、本社の検査部の検査官が、検査のために支店に来て、私の部下と面談をしたとき、『あなたの支店の今期の方針はどういうものですか』と質問したことに対し、その部下は、『それは聞いたことがありません』と回答したことがあり、私が恥ずかしい思いをした。支店では、今回のように6か月ごとに方針発表会議を開き、その時に方針を伝えているのだから、本社の人に『聞いていない』と言わないよう、しっかり会議の内容をきいて欲しい」というものです。

私は、その支店長が批判したような、不心得な職員は、ほかにはほとんどいないと思っていますが、そのようなことがあったとすれば、社会人としてとても恥ずかしいことだと思います。とはいえ、従業員の中には成長の途上にある人もいるわけですから、経営者としては、自社の方針は1度だけ伝えればよいとは考えず、しっかり覚えてもらえるよう、何度も伝える機会を作らなければならないでしょう。

もうひとつ思い出すことは、ユニクロを運営するファーストリテイリングの会長の柳井正さんが、ご著書、「一勝九敗」に書かれていた、柳井さんあての苦情についてです。それは、かつて、柳井さんに男性から苦情の電話がり、その男性のご夫人とお子さんが外出しているとき、お子さんの具合が悪くなったので、救急車を呼ぶために、近くにあったユニクロのお店に行き、電話を貸して欲しいと依頼した。

でも、店員さんからは、会社の規則で電話を貸さないことになっていると、断られたが、ユニクロではどのような教育をしているのか、というものだったそうです。それがきっかけで、柳井さんは、会社の規則を廃止したそうです。会社の規則を作るべきかどうかは別として、従業員の方が、規則を表面的にしか理解せず、常識的な判断ができなかったことは、とても残念な出来事だったと言えるでしょう。

このような、規則的にしか動かない人は、機械的な人と言われますが、現在は、事業活動に人工知能が活用される時代です。機械的な人が不要となってきている時代にあっては、人間味のあるコミュニケーションができるということは、重要さを増しつつあると言えるでしょう。コミュニケーションは、多くの人が重要と認識しつつも、実際は、疎かにされているということもあるので、それを活発にできるかどうかということが、組織の効率を高めるための鍵になっていると、私は考えています。

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