鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

コミュニケーションは手段に過ぎない

[要旨]

コミュニケーションは大切であるものの、意思を伝える手段でしかないので、単に、口頭や文章で経営者の意思を伝えるだけは不十分であり、経営者自身の行動がともなわなければ、部下は経営者の考え方を得心するまでには至りません。


[本文]

前回の記事で、「会社の中でのコミュニケーションを円滑にするには、依頼事や指示は、1度伝えただけでは伝わらないという前提でのルールを定着させることが大切」ということを書きました。しかし、会社の朝礼や会議などで、経営者の方が、これまで何度も話して来ていることを、またしゃべり出してうんざりさせられるという経験を持っている方も多いと思います。そういうときは、「その話は1度聴くだけで十分」と感じるでしょう。その一方で、経営者の方の中には、「会社の方針を何度も伝えているのに、部下たちには届いていない」と感じられることもあると思います。

この両者の間にギャップが生じる要因は、いくつもあると思いますが、私は、そのひとつにパッションがあると思っています。このパッションの大切さは、リッツカールトンホテルの元日本支社長の高野登さんがお話しておられたものです。「リーダーが、情熱を、最前線のスタッフに100%伝えようと思うなら、リーダーの情熱は100%だけでは足りない。情熱は、伝えるごとに薄まっていくので、最前線のスタッフの情熱が100%であるためには、リーダーの情熱は400%でなければいけない。リーダーでいるということはそういうことだ」(ご参考→ http://bit.ly/2AjTlLv

さらに、高野さんは、ライオンの人形のエピソードについてもお話しておられます。「ある日のディナータイムのメインレストランに、小さな男の子がいる家族が訪れたが、その男の子が泣き出してしまい、静かな時間を過ごすためのレストランの中が騒がしくなった。そこで、それを見たウェイターが、売店からライオンの人形を持ってきて、その男の子にプレゼントしたところ、男の子は機嫌を直した。

翌日、総支配人がそのウェイターを部長会の場に呼び出し、『彼は、私が毎日言い続けているエンパワーメント(権限委譲)を実践した』とほめちぎった。そうすることで、他のスタッフも、本当にそこまでやってもいいのか、と思えるようになった。しかし、そのウェイターをほめたという行為は、総支配人が自分の考え方をスタッフたちに実感をともなって伝えるための作戦だったと思う」

話をもどすと、経営者と部下の間のコミュニケーションのギャップは、話す側が、具体的な行動がともなうことなく、単に口だけで伝えようとし、その結果、聞く側も、口だけで中身のともなわないことを言っているとしか受け止めないために生じるのだと思います。すなわち、コミュニケーションが大切なものとはいえ、手段に過ぎないので、行動がともなわなければ無意味なものになってしまうということなのでしょう。すなわち、組織を活性化させるためには、経営者は口先だけでは十分に役割を果たすことができない、重要な役割を担っていると、私は考えています。

 

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