鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

人材育成は組織的に行うことが望ましい

[要旨]

千葉県立幕張総合高校野球部の早坂響投手は、昨年の秋まで捕手でしたが、外部のトレーナーの指導を受け、投手として大きく成長し、県大会でチームのベスト16進出に大きく貢献しました。これは、野球部監督が、自分の価値観で選手を育成することが必ずしも最善とは限らないと考えによるものです。これは、ビジネスにもあてはまり、人材育成は組織的に行う方が事業活動に好影響を与えることができると考えることができます。


[本文]

先日、日本放送協会さんのテレビ番組で、千葉県立幕張総合高校野球部の、早坂響(おと)投手が紹介されていました。番組によれば、早坂投手は、最速150kmのストレートを投げ、夏の高校野球千葉大会では、4試合に先発していずれも完投し、夏の大会では初めてのベスト16入りを果たしたそうです。しかし、早坂選手は、昨年の秋までは捕手として活躍し、投手に転向してからは1年未満であるにもかかわらず、これだけの活躍をしたことが注目されているそうです。では、どうして早坂投手が急に投手としての能力を伸ばして来たのかというと、月に1回のペースで、東京都内にあるトレーニング施設で指導を受けているからと言うことです。

トレーナーの北川雄介さんによれば、早坂投手は、「初めてピッチャーとして投げた1年前、最速132キロだった球速は、20キロ近くもアップし、体の重心を整えることでコントロールも大きく改善」したそうです。では、なぜ、早坂投手が北川さんのトレーニングを受けるようになったのかと言うと、それは、野球部監督の柳田さんの薦めがあったからだそうです。このことについて、柳田監督は、「専門家に見てもらうのが、選手にとっては一番幸せだと思うんですね。私の価値観を押しつけても、合っていればいいんですが、当然合っていない場合もあります。だったら信頼できる専門家に見てもらった方が、伸びるんじゃないかと思います。

もしかしたら勇気のいることなのかもしれませんが、北川さんを信頼しているので、思い切ってよかったです。早坂投手は教えてもらったことをチームに還元しているので、彼が個人指導を受けたことは、チーム全体にとってもいい影響を与えていると思います」と述べておられます。私は、この柳田監督の、「私の価値観を押しつけても、合っていればいいんですが、当然合っていない場合もある」という言葉に注目しました。そして、この幕張総合高校と同じような選手育成を、プロ野球ソフトバンクホークスも実践していることを思い出しました。

ホークスは、実力のある選手を獲得するのではなく、3軍で選手を育成するという方針で運営しており、中心選手の千賀滉大投手(現、ニューヨークメッツ)や、甲斐拓也捕手は3軍出身です。すなわち、ホークスは、監督だけの采配で選手を育成しているのではなく、組織的な育成を行っているということです。とはいえ、監督だけが采配するよりも、組織的に選手育成をする方が、所属選手の実力が向上するということは、誰でも容易にわかることです。ただ、スポーツチームは、監督がすべてを差配するものというイメージが、今も強く残っているのだと思います。

でも、幕張総合高校やホークスの事例からもわかるように、そのような考え方は変えるべき時代になってきていることは確かです。そして、これは、ビジネスにもあてはまることはいうまでもありません。経営者の方は、「自分の価値観」のみで人材を育成したり、配置したりするよりも、専門性の高い人に人材を育成を委ねることの方が、経営環境が不透明な現在は、個人の能力をより適切に高めたり、環境に適応した組織の活性化に資することになると考えられます。

2023/7/31 No.2420