[要旨]
VUCAの時代は、リーダーだけがリーダーシップを発揮するチームよりも、チームメンバーが主体的に動き、自らのチームの動きや成果に、当事者意識を持つことで、高い成果を出すことができます。したがって、経営者は、これからは、リーダーだけでなく、メンバー全員に対してリーダーシップを身につけてもらえるよう、働きかけることが大切です。
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今回も、前回に引き続き、立教大学経営学部の中原淳教授の著書、「チームワーキング-ケースとデータで学ぶ『最強チーム』のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、VUCA病になっている組織を改善するためには、組織開発を行うことが有効であり、その組織開発は、8~10人程度のチームで行うことが効率が高いということを説明しました。これに続いて、中原教授は、チーム内でのリーダーシップについてご説明しておられます。
「チームワークは、リーダーによるリーダーシップ発揮だけでは成り立ちません。チームで何が起きているのか、チーム活動をつぶさに見ていくと、リーダーだけでなく、チームメンバーもリーダーシップを発揮して、主体的に活動していることが分かります。リーダーのみの独力で、チームを率いていくころは、不確実性の高い現代の社会では、実に難しいのです。むしろ、これからは、チームメンバーが主体的に動き、自らのチームの動きや成果に、『当事者意識』を持って初めて、チームは高い成果を出せるのです。
皆さんも、うまくいったチーム活動のことを思い出してみてください。良いチームとは、大抵、『あのリーダーは素晴らしかったけれど、メンバーもそれぞれみんな最高だった』というものではないでしょうか。つまり、チームワークは、本来、『管理職・リーダー』だけの問題ではなく、『チーム全体の問題』であり、『チームメンバー一人ひとりの問題』であるはずなのです」(48ページ)
この中原教授のご指摘も、ある意味、当然のことです。チームのメンバーが自立的に活動することは、VUCAの時代に向いていることは確かですが、メンバーが自立的でなく、逐一、リーダーに指示を受けて動くよりも、ずっと効率的であることは容易に理解できると思います。ですから、メンバーが自立的に活動するようになるということは、各メンバーがリーダーシップを発揮できるようになるということでもあります。
そこで、中原教授は、「チームワークは、『管理職・リーダー』だけの問題ではなく、『チーム全体の問題』であり、『チームメンバー一人ひとりの問題』」とご指摘しておられるのだと思います。ところが、チームメンバー全員がリーダーシップを発揮するようにすることは、実際は、とても難しいということも現実だと思います。しかし、少ないながら、各チームメンバーがリーダーシップを発揮している組織を見る時があります。
例えば、スターバックスコーヒーは、サードプレイスを提供しているというコンセプトのもと、各店員さんは、カップにメッセージを書くなどの心のこもった接客をしています。もちろん、こういった店員さんを育成することは一朝一夕では実現しないことも確かです。しかし、業績を伸ばすためには、ヒット商品をつくるとか、営業活動に注力するとうことよりも、一人ひとりの従業員にリーダーシップを身につけてもらうことの方が効率的だと思います。そして、会社の競争力は、こういう組織開発ができる会社かどうかにかかっていると思います。
2023/5/2 No.2330