鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自己中心性バイアス

[要旨]

チームの成果を高めるためには、メンバーがチームを俯瞰して全体像をつかむための視点を持つことが必要です。しかし、人間は、どうしても、自己中心性バイアスを持ってしまい、チームを俯瞰できなくなってしまいがちなので、これを排除するよう強く意識することが大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、立教大学経営学部の中原淳教授の著書、「チームワーキング-ケースとデータで学ぶ『最強チーム』のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、成果の出ないチームでは、チームは一人のリーダーが率いるものと捉えていますが、成果の出るチームは、チームを全員でリードするものとして捉えているので、チームの成果が出るようにするためには、定期的な振り返りを行うようにしなければならないということを説明しました。

これに続いて、中原教授は、チームをうまく機能させるには、チームメンバーが、(1)チーム視点、(2)全員リーダー視点、(3)動的視点を持つことが大切だと述べておられます。今回は、このうち、チーム視点について説明します。「総じて、人間とは、どんなに意識していても、『自分の視点』だけに沈溺してしまいがちな存在です。(中略)このように自分の視点で物事を考えてしまう人間の思考を、心理学では、『自己中心性バイアス』と言います。このことをよく知らせる事例に、『目が見えない人と象』という、インド発祥とされる寓話があります。

6人の目が見えないインド人たちが、それぞれ象の別々の部位に触れ、『象は壁のようだ』、『象は槍のようだ』、『象はホースのようだ』、『象は木の幹のようだ』、『象はうちわのようだ』、『象はロープのようだ』と、それぞれが異なった特徴を述べ、全体像を掴むことができないという寓話です。(中略)では、どうすればチームを俯瞰して見る視点を獲得し、チームの全体像をつかむことができるのでしょうか?(中略)実際には、チームの一人ひとりが、どの方向を向いているのか、どのような思いを持って何をしているのかを観察したり、コミュニケーションを取ったりすることで、チーム全体の動向を把握し、『俯瞰する』のです」(69ページ)

中原教授がご指摘しておられる通り、人はどうしても自己中心性バイアスを持ってしまうので、意識してチームを俯瞰するように心がけすることがとても重要だと思います。その方法として、中原教授は、チーム全体の動向を俯瞰することを示していますが、そのことも、強い意識を持続しないと、自己中心性バイアスに陥ってしまうので、そうならないような訓練を常に自分に課していくしかないと、私は考えています。

ちなみに、ワークマンの専務取締役の土屋哲雄さんは、従業員の方に対し、「私の考え方は50%間違っている」と伝えているそうです。こうすることで、自分の考え方を絶対視しないようにしたり、従業員の方が土屋さんに対して意見を言いやすくしたりするようにして、自己中心性バイアスを排除するようにしているのでしょう。もちろん、自己中心性バイアスを排除する方法は、この土屋さんの方法だけではないと思いますが、こういう意識を継続させることは、チームの成果を高めるために重要だと思います。

2023/5/5 No.2333