鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

サービス・マーケティングはモノも対象

[要旨]

管理マーケティングが前提とするモノとしての商品とは違って、サービスは、結果だけでなく、過程の品質も問われますが、現在は、あらゆる商品が「拡張された商品」として、必ずサービスをともなうので、モノとしての商品であっても、過程についても管理する必要があります。すなわち、有形の商品を売る商品にも、無形の商品を売るためのサービス・マーケティングを行う必要が高まっています。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、セブンイレブンの特徴のひとつであり、コンビニエンスストアの代表的な運営手法である多頻度少量配送は、セブンイレブンの営業を開始する前ではなく、実際に開始してから、在庫の山と格闘する中で、その手法をとることが妥当ということが分かったように、事業活動が奏功しなかったとき、その結果だけでなく過程に着目することでビジネスチャンスを発見することができるようになるということを説明しました。

これに続いて、鈴木さんは、事業のプロセスを重視する背景には、あらゆる商品は、「拡張された商品としてのサービス」をともなっているということが挙げられるとご説明しておられます。「管理マーケティングが前提とするモノとしての商品とは違って、サービスは、結果だけでなく、過程の品質も問われます。サービスでは、現場の過程まで踏み込まないわけにはいきません。

現場の過程については、顧客の視点から見た、一連の体験として、一般には、『カスタマー・エクスペリエンス(CX、顧客体験)』(中略)と呼ばれ、競合他社との価格競争を避け、差別化を図るために有効な手段としても取り組まれるようになっています。(中略)そもそもあらゆる商品は、『拡張された商品』として、必ずサービスをともなうので、実は、モノとしての商品であっても、過程についてみていくことが不可欠なのです。もっぱら、モノとしての商品を前提としてきた管理マーケティングとは別に、1970年代以降、米国では、『サービス・マーケティング』(中略)として研究されています。

日本は、ものづくりにこだわり、モノとしての商品のマーケティングにばかり注力することで、とりわけサービスに着目し、注力している海外企業とのグローバルな競争において、サービス業のみならず、製造業の低迷をもたらしてきたのではないでしょうか?コンテンツ配信サービスのiTunesStoreを2003年二初め、瞬く間に市場を席捲したAppleの飛躍と、音楽配信サービスの技術を持ち、bitmusicを1999年に始めながら、注力し切れなかったソニーの凋落が、彼我の違いを象徴しています」(164ページ)

(狭い意味での)サービス業(宿泊業、飲食業、娯楽業、運送業、通信業など)の商品は無形であり、有形の商品を売る事業とは異なるマーケティングが行われます。これが、鈴木さんもご説明しておられるように、サービス・マーケティングです。ところが、現在は、「拡張された商品」としてサービスがともなう、すなわち、有形の商品を販売する場合であっても、無形のサービスもあわせて販売しています。

そして、その無形の部分は、年を追って重要性が高まっています。そうであれば、現在は、有形の商品を販売している事業であっても、サービス・マーケティングを実践しなければならなくなっているということです。そこで、そのサービス・マーケティングを実践するために、事業活動のプロセスも評価する必要があるということになります。この、プロセスを評価するという活動は、まさに事業の管理であり、管理活動を主たる役割としている経営者の能力が問われることになるという証左でもあります。

2023/3/16 No.2283