[要旨]
セブン-イレブンは、初めての出店でいきなり在庫の山に直面したことから、単品管理・小分け配送・ドミナント出店という、3つの基本戦略を独自に編み出しました。このように、事業活動が奏功しなかったとき、その結果だけでなく過程に着目することでビジネスチャンスを発見することができるようになります。
[本文]
今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、ファストファッション業界では、週単位で、店頭の衣類の販売状況を生産計画に反映させることで、流行の衣類を低価格で提供し、競争力を高めているということを説明しました。これを受けて、鈴木さんは、成功した結果だけでなく、そこに至ったプロセスにも注目することが大切ということをご説明しておられます。
「計画を実行したら、後は結果がすべてであり、失敗するなどもってのほかなのでしょうか?計画を実行するには、現実となった内容である『結果』という孤立した静止画のような断面だけでなく、現実をつくりだしていく、連続した動画のような『過程』にも着目しなければなりません。過程とは、ものごとが変化・進行・発展して、ある結果に達するまでの一連の道筋・プロセスのことです。結果についてのみ着目していては、本当のところ、なぜそうなったのかはわかりません。
過程を経て、初めて結果が生まれるからです。(中略)ヤマト運輸は、全国をカバーするために、過疎地へも進出する中で、産地からの要望を受け、『新鮮直送』という新たな市場を生み出しました。セブン-イレブンは、初めての出店でいきなり在庫の山に直面したことから、単品管理・小分け配送・ドミナント(高密度多店舗)出店という3つの基本戦略を、独自に編み出したのです」(161ページ)
いまでは、多頻度少量配送といえば、コンビニエンスストアの特徴を示す物流手法ですが、セブンイレブンでは、それは最初から行われていたわけではなく、実際に事業を開始してから生み出されたもののようです。このように、効果の高い戦略は、後付けであることも少なくない訳ですが、このようなことは、多くのビジネスパーソンの方も経験があるのではないかと思います。
しかしながら、鈴木さんもご指摘しておられるように、結果にだけ注目していると、プロセスの中に埋もれている、効果の高い戦略を発見できずに見逃してしまうことになりかねません。引用の事例以外にも、例えばアイリスオーヤマでは、自社製品をホームセンターに卸しても、ホームセンターの従業員の正社員が減少し、店頭での販売スキルが下がったことから、自社従業員を無償でホームセンターに派遣し、自社製品の販売数を増やすことに成功しています。
こういった、うまく行っていない結果に対しては、過程に注目することで、収益機会を発見することができます。ただ、このような収益機会は、前述したように、後付けで分かるコロンブスのたまごのような面もあり、なかなか発見できないことも事実です。でも、ヤマト運輸やセブンイレブンのような事例はたくさんあるわけですから、根気強く過程に着目するする姿勢を取り続けることが、コロンブスのたまごを早く発見できる能力を高めることにつながると、私は考えています。
2023/3/15 No.2282