[要旨]
セブンイレブンは、商品開発や売場の開発で業績を高めてきましたが、かつて、ブランドの表示が不統一のままでした。しかし、ロゴやパッケージを統一したことで、顧客にセブンイレブンの開発した商品であることを認識されやすくした結果、売上増加率が2%から7%に上昇し、平均日販も約4万円増加しました。
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今回も、前回に引き続き、鈴木敏文さんのご著書、「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、独自の経営センスで、商品の開発をしたり、売り場づくりに力を注いだりするとで、セブンイレブンの売上を増やしてきましたが、そんな鈴木さんでも気づかないことがあったそうです。それは、商品のロゴやデザインの統一なのですが、それを気づかせてくれたのは、同社の株主向けの広報誌の企画で対談をした、クリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和さんだったそうです。
「『伝わらないのは存在しないのと同じ』と話す、佐藤さんの優れた感覚に共感し、私は、『セブン-イレブンを進化させるために力を貸して欲しい』と、デザインのトータルプロデュースをお願いしました。プロジェクトを進める過程で、ある時、セブン-イレブンの弁当を試食した佐藤さんの口から、『ところで、この弁当は、どこの仕出し屋がつくっているのですか』と、意外な言葉が飛び出しました。セブン-イレブンの弁当は、チームマーチャンダイジングと言って、メーカーとチームを組んで共同開発し、品質の改善改革を積み重ねてきました。
ところが、コンビニに強い関心を持っていたという佐藤さんにも、価値が伝え切れていなかったのです。商品の『個と全体』という観点で言えば、我々は、これまではそれぞれの商品について、『個』としてしか考えていなくて、『セブン-イレブンとしての弁当』という『全体』の感覚がありませんでした。実は、我々は、それがあるつもりでいたのですが、弁当にはロゴマークもついていないし、パッケージも全部違っていました。セブンプレミアムも、ロゴは不統一で、結局、すべてバラバラで、セブンプレミアムもブランドのイメージが伝わっていなかったのです。
そこで、バラバラだった商品のロゴやパッケージデザインを統一するために、売り場全体でブランド価値を再構築し、お客様に再認識してもらう、ブランディング・プロジェクトを1年がかりで進めました。そして、2011年(中略)、ロゴとパッケージを前面刷新しました。(中略)店内でのセブンプレミアムの存在感が一気に増し、ブランドが際立つようになり、それは売上高の急伸となって表われました。デザインの力を得たことで、デザインを刷新した年の既存店売上高の伸び率は、約7%と、前年の約2%を大幅に上回り、全店平均日販も4万円増え、業績の大きな伸びを実現したのです」(74ページ)
ブランドには、出所表示機能、品質表示機能、宣伝広告機能、資産価値機能の4つの機能があると言われています。このような基本的な知識は、当然、鈴木さんはご存知であったとは思いますが、引用部分でも述べておられるとおり、鈴木さんたちは、顧客に伝わっていると思っていたのに、そうはなっていなかったことを、佐藤さんに気づかせてもらったようです。ただ、鈴木さんは言及していませんが、同社は、資産価値としてのブランドを高めていたと考えることができます。だからこそ、ロゴとパッケージを統一したことで、売上の増加率が上昇したと考えることができます。
もうひとつは、小売業が開発するブランドは、プライベートブランドといいますが、これは、一般的に、メーカーが開発するナショナルブランドと比較して、価格が低い商品が多く存在しています。しかし、セブンイレブンでは、プライベートブランドであるにもかかわらず、ナショナルブランド以上に資産価値を高めている点でも、同社の売上が増加している点が特徴だと思います。むしろ、メーカーと小売業のダブルブランドの相乗効果が得られているのだと思います。
2022/11/6 No.2153