鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

サービス・ドミナント・ロジック

[要旨]

サービス化の進展を背景として、たとえモノとしての商品であっても、その商品が果たすべき機能はサービスにほかならず、サービスこそが商品の効果の源泉であり、商品とサービスを二分する従来の区分は意味をなさないと、2004年頃から主張されるようになっています。このような考え方は、サービス・ドミナント・ロジック(サービスが支配的な理論)と言われています。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、製造業の製品であっても、製品の評価は、製品そのものよりも、それに付随するサービスに比重が移りつつある、すなわち、製造業のサービス化が進んでいるということを説明しました。これに続いて、鈴木さんは、サービス・ドミナント・ロジック(サービスが支配的な理論、SDL)という考え方について説明しておられます。

「サービス化の進展を背景として、たとえモノとしての商品であっても、その商品が果たすべき機能はサービスにほかならず、サービスこそが商品の効果の源泉であり、商品とサービスを二分する従来の区分は意味をなさないと、2004年頃から主張されるようになっています。商品と具体的な複数形のサービス(services)と合わせて抽象化した、ナレッジやスキルに相当する単数形のサービス(service)こそが、マーケティング全体を支配する論理だとします。これは、『サービス・ドミナント・ロジック』と呼ばれ、賛同する研究者が増えています。

この論理は、レビットの主張した、商品からサービスへと『拡張された商品』とは逆に、サービスの方から商品へと『拡張されたサービス』を主唱するものということができます。モノとしての商品として狭くとらえてはいけないという点では一致しています。サービス・ドミナント・ロジックは、実践マーケティングにも通じる考え方ですが、マーケティング理論の基本的な前提について、まだ、議論がなされている段階なので、本書ではここで触れるだけにとどめます」(64ページ)

製造業のサービス化は、製品にサービスを加えて顧客からの評価を高めるという考え方であるのに対し、SDLは、サービスを提供するために製品を活用するという考え方です。顧客に提供するものは製品ではなく、サービスであり、それを実現するために製品を提供するということです。このSDLの代表的な事例は、Kindleと言われています。

Kindleは電子書籍サービスですが、専用端末だけでなく、PCやスマートフォンでも閲覧できるようアプリも提供しており、あくまで、専用端末の販売ではなく、電子書籍が閲覧できるようにするという、サービスの提供が事業の目的になっています。鈴木さんは、SDLは議論の段階と述べておられますが、私は、これからもSDLの考え方に基づく事業は増えていくと感じています。また、SDLが主流になるかどうかは別として、新たな事業を検討するときは、このSDLの考え方は、競争力の高い事業の開発のヒントになると思います。