鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

感情に働きかけるマーケティング

[要旨]

全国的に人気のゆるキャラくまモン」による経済波及効果は、2012年~2013年の2年間で、1,244億円であったと伝えられているように、人が商品を購入するときは、理性ではなく感情によって決めていると考えられています。したがって、これからは、理性ではなく、感情に対応した働きかけるマーケティング戦略の効果が大きいと考えることができます。


[本文]

今回も、大阪ガスエネルギー・文化研究所の主席研究員の鈴木隆さんのご著書、「御社の商品が売れない本当の理由-『実践マーケティング』による解決」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。前回は、顧客の意思決定の瞬間、すなわち「真実の瞬間」に注力する手法は、効果的なマーケティング活動が行えるようになるということを説明しました。これに続いて、鈴木さんは、現在は、感情に働きかけるマーケティング活動が重要であると説明しておられます。

「現在では、実は、感情は理性にとって不可欠であり、合理的で適応的な行動を高度に支えるものであることが明らかとなっています。理性は結論を導きますが、行動を導くのは感情なのです。(中略)管理マーケティングでは、依然としてもっぱら理性への働きかけが前提とされています。感情を正面から体系的に取り上げた研究は、それ自体が一種の感情といえる顧客満足に関するものを除けば、音楽や映画の鑑賞、スポーツ観戦、ファッションといった、消費についての研究など、わずかしかありません。

それが、2000年頃から、購買行動や消費している間に生まれる感情も含めた経験から得られる価値について注目されるようになり(経験価値マーケティング)、最近では、経営学者のなかからも、好き嫌いに目を向けなければ、経営の本当の動因はつかめないとして、好き嫌いの復権が主張されるようになってきています。全国的に人気のゆるキャラくまモン』は、日本銀行熊本支店によれば、2012年~2013年の2年間で、1,244億円の経済波及効果を熊本県にもたらしています。くまモンがついただけで、従来と同じ商品サービスでも売上がアップしています」(211ページ)

鈴木さんが述べておられるように、「行動を導くのは感情」、すなわち、好きか嫌いかで買うものを決めているということは、誰でも理解すると思います。しかし、商品を売る側は、顧客が理性で論理的に買うものを決めていると考えがちなので、いろいろと、商品を買ってもらえるような論理を探しがちです。

でも、人は感情で商品を買うかどうかを決めているということは、徐々に広まってきており、最近では、くまモンと同様に、人気キャラクターを使った商品が増えて来ています。鉄道事業の収入よりも、お菓子の売上収入が多く、6年ぶりに黒字化した銚子電鉄も、銚子電鉄を応援したいという鉄道ファンに向けた商品を販売して成功した事例でしょう。とはいえ、すべての商品が、感情に訴えれば売れるとは限らないとは思いますが、現在は、その要素が強まりつつあると、私は考えています。

2023/3/20 No.2287