[要旨]
ニトリでは、従業員の方に成長してもらうために、部下に挑戦する機会を与えるようにしているそうです。その際、もし、部下が失敗したとき、上司が助けてくれないと分かっていると、部下は挑戦を避け、成長しなくなるので、上司が部下の失敗の責任を取るなど、上司は部下を見守る姿勢で接することが欠かせません。
[本文]
今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。似鳥さんは、従業員の方が会社を成長の場であると感じられることで、満足度が高まると述べておられますが、その従業員の方が成長するには、上司の方の役割が大きいということも述べておられます。
「人が社会人として成長していく上で、上司の果たす役割はとても大きいものです。ニトリの社内にも、『チャンスを与えてやれば伸びる人なのに』と思う人はたくさんいます。そういうチャンスを、与えられるかどうかは、上司次第です。成長しようとする部下に、難しい課題を与え、その苦闘を愛情をもって見守っていてくれるのが、理想の上司です。これは、『下から見て優しい上司』ということではありません。むしろ、怖くて厳しい上司でいいのです。
上司が自分の成長を望んでいるのか、それとも使い捨てでいいと思っているのか、それは部下にもすぐにわかります。接する態度はどうでも、どんどん部下に挑戦させて、『失敗の責任はオレが取る』と言ってくれる上司でないと、部下は成長しません。『もし、失敗したら、何を言われるかわからない』という上司の下では、部下は挑戦などできません。誰も背中を押さずに放置していれば、大きく伸びる人は全社で何十人程度しか現れないでしょう。でも、すべての上司が部下の背中を押してあげれば、その割合はずっと増えるはずです」(114ページ)
ほとんどの経営者や上司は、部下に成長して欲しいと考えていると思いますが、そうであれば、似鳥さんが述べておられるとおり、ある程度の失敗を許容しなければ、部下の成長の機会を奪うことになります。とはいえ、このこともほとんどの経営者や上司は理解できていても、部下の責任を取ることは、感情的にはなかなか受け入れることが難しいと思います。
その一方で、これからは、会社の競争力を高めていくためには、よい人材がいるかどうかという要素の比重が高くなってきているので、部下を成長させるための努力は、ますます重要になってきているということも、言及するまでもありません。よく、会社を発展させるためにはどうすればよいかということを議論するとき、戦略や技術などの良し悪しが俎上に上がりますが、それよりも前に、部下の失敗をどれだけ受け入れることができるのかという、経営者や上司の器量の大きさが問われているということを、似鳥さんの方針を読んで、改めて感じました。
2022/10/31 No.2147