鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

自分自身が成長するための場が会社

[要旨]

ニトリ会長の似鳥さんは、従業員の方に、給与面で報いようとすると同時に、会社を自分の成長を感じることができる場にしてもらおうと考え、それに取組んできました。このように、成長を感じてもらえるようにすることは、授業員の方の士気を高め、さらに、会社の競争力を高めることにもつながります。


[本文]

今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。似鳥さんは、会社の従業員の方には、夢と希望を持ってもらうことが大切であると考え、それを創業時からの課題として取り組んできたそうです。「創業以来の私の課題は、『いい会社、社員が楽しく働ける会社を作ること』です。私は、『お客様を喜ばすにはどうしたらいいだろう』と考えるのと同じように、社員の財産を増やすのには、どうしたらいいだろう』と、いつも考えています。

いずれは、大企業の数倍の生涯賃金を実現し、『ああ、ニトリにいてよかった、幸せだ』と言ってもらいたいのです。(中略)学生たちから、『就職したい』と思われるには、労働条件もよくないといけませんが、それ以上に、未来に夢と希望を持たせてあげられることが大切で、そのためには、やはり、ロマンとビジョンがなければいけません。もうひとつ、自分の成長を感じられることも大切です。

白井さん(ニトリホールディングスの白井俊之社長、同社の黎明期の1979年に同社に入社)たちの世代は、私と一緒にチェーンストア理論をひとつひとつ勉強し、若いうちから自分たちの手で実現させて行きました。それが働く喜びだったのだと思います。小さな成功体験を積み重ねて、『進んでいるな』、『成長しているな』と実感できることが、がんばる意欲につながるのです。(中略)『会社のため、社長のために働くのではなく、自分自身が成長するための場が会社である』と感じられる、そういう会社にしたいと思ってきました」(103ページ)

この、似鳥さんの、「会社は、従業員の方が、自分の成長を感じることができる場にする」という考え方は、多くの方がその通りだと思う考え方だと思います。米国の心理学者で経営学者のハーズバーグが提唱した、動機づけ衛生理論でも、同様のことを示しています。すなわち、給与などの待遇を改善することは、不満をなくすことはできても、満足をもたらさない(衛生理論)が、達成感や能力向上を感じてもらうことで、満足を感じてもらえるようになる(動機づけ理論)というものです。

現在は、難易度の高い経営戦略を実践しなければ、競争には勝てなくなりつつありますが、それを実践するためには、従業員の方のモラール(士気)を高めることが欠かせません。では、どうやって、士気を高めるのかというと、給与などの待遇を改善するだけでは限界があり、成長などを実感してもらうことが必要です。

しかし、給与を高めることもたいへんなのですが、従業員の方に成長を感じてもらえるようにすることは、もっとたいへんなことでしょう。成長を感じてもらえるようにするにはどうすればよいのかということについては、次回、述べたいと思いますが、経営者の方が、競争力の高い会社を作るには、従業員の方の士気を高めるという、難易度の高い活動を実践しなければならないということを認識することが必要だと、私は考えています。

2022/10/28 No.2144