鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

数字の入らない会話は仕事ではない

[要旨]

ニトリでは、かつては、社内で数字を入れずに会話をしていたため、抽象的でわかりにくく、無駄と失敗が多い状態になっていたそうです。そこで、現在は、従業員の方の会話には、必ず数字を入れるように働きかけているそうです。同社の発展は、従業員の方たちが数字を意識するようになったことが、大きな要因となっています。


[本文]

今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。前回は、ニトリでは、チェーンストア理論に基づいて、従業員の方へ「売る」努力を求めるのではなく、会社として「売れる」状態をつくることを目指して実践してきたということを説明しました。これについて、似鳥さんは、数字を使うことが重要だと述べておられます。

ニトリでも、ペガサスクラブ(チェーンストアのコンサルティングの第一人者の、渥美俊一氏(故人)が設立した、チェーンストア経営の研究団体)に加入する前は、数字で経営することなど、まったくやっていませんでした。数字がないということは、抽象的でわかりにくくて、無駄と失敗が多すぎる経営だったということです。そういう、悪い習慣を変革するために、私は、『数字の入らない会話は、仕事ではなく、遊びか趣味』と言い切り、すべてに数字を入れて話すよう、社員に求めました。

今では、何についても、数字を入れて話をすることが、ニトリで定着しています。しかし、このようなシステムを作るまでには時間がかかります。よい習慣を定着させるためには、10年、20年と、日々、同じことを言い続け、そうするよう要求し続けるしかありません。たまに、思い出したように言ってもだめです。途中であきらめてもだめです。とにかく、100%、できるようになるまで、ひたすら言い続けることです」(103ページ)

似鳥さんは、「数字の入らない会話は、仕事ではなく、遊びか趣味」と言い切るくらい、数字にこだわっておられますが、数字を使って考えなければ、「抽象的でわかりにくくて、無駄と失敗が多すぎる経営」になってしまうということは、ほとんどの方が理解できると思います。その一方で、「数字の入らない会話」をしている会社が多いのが実態ではないでしょうか?では、なぜ、「数字の入らない会話」をしている会社が多いのかという理由を考えたとき、私は、稲盛和夫さんが、「潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つことが大切」とお話しておられたことを思い出しました。

稲盛さんは、「自分が立てた経営目標を、朝起きてから寝るまで四六時中考える、そのように強く持続した願望は、その人の潜在意識に入り、自分をその方向へと自然に向かわせますと、お話しておられます。私も、この稲盛さんの教えを実践できていないので、自分自身にも言えることなのですが、「数字の入らない会話」をしているということは、稲盛さんの考え方から見れば、目標を意識していないということなのだと思います。

これに対して、「会話に数字が入っていなくても、目標を意識していないとはいえない」と、反論する方もいると思います。それはそうかもしれませんが、目標を意識している度合いでは、会話に数字が入っている方が、相当高いということに間違いはないし、経営者の方や従業員の方が、目標を常に意識して活動している会社の方が、目標を早く達成するということも間違いはないと思います。もちろん、会社の経営は、数字がすべてではありませんが、事業管理の大部分は数字で行うことは避けることができません。

2022/10/27 No.2143