鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

会社の目的と従業員の目的を接続する

[要旨]

経営者の方は、ひとり、または、限定された人たちで会社の方針を決め、それを社内に伝えることが多いと思いますが、そのままでは、従業員たちは受動的に活動することになります。そこで、会社の目的と、従業員が働く目的が多く重なるよう、体制を整備したり、従業員へ問いかけをしたりすることで、能動的に活動してもらうための働きかけをすることが大切です。


[本文]

今回も、前回に引き続き、エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんのご著書、「未来を共創する経営チームをつくる」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。鈴木さんは、会社組織が組織的活動をできるようになるためのポイントとして、「主体化」という考え方について、同書でご説明しておられます。「哲学者のミシェル・フーコーが、晩年に唱えた概念に、“主体化”という言葉があります。会社というのは、それ独自の考え方を持とうとするわけですが、それに自分なりの意味づけをすることに成功した人を、“主体化した人”といいます。

言い方を変えれば、“会社のパーパス”と“自分自身の生きる意味”を接続することに成功した人が“主体化した人”ということでしょう。会社に、肉体的、物理的に所属していても、社会的、精神的レベルで所属していない人というのも、実は、たくさんいます。そういう人たちは、会社に対して、“主体化”していません。(中略)(では、どうすれば主体化していない人が主体化するようになるのかというと)パーパスの接続は、対話を通して起こります。『会社の社会的な存在意義と、自分が生きる意味はどこで交わるのだろうか?』という問いかけを続けることで、その接点がだんだんと認識されるようになってきます」(150ページ)

私は、主体化という言葉は初めて知ったのですが、会社の目的と、従業員のやりたいことが一致していると、組織としての会社の業績が高くなることは、容易に理解できます。その一方で、会社の目的と、従業員の目的を一致させるということは、頭で考えるほど容易ではないということも現実的でしょう。そこで、最近は、従業員満足度という考え方を採り入れる会社が増えてきたのだと思います。すなわち、会社の業績を高めるには、従業員に犠牲を強いるのではなく、従業員の満足度を高め、そのことによって会社の業績を向上させていこうという考え方です。もちろん、この「従業員満足度向上→顧客満足度向上」という流れをつくることも容易なことではありません。

でも、中小企業でも、これを実践し、成功させている会社はあります。例えば、以前、ご紹介した、平鍛造の前社長の平美都江さんは、平さんが社長時代に、会社の安全確保や働きやすい環境をつくることで、従業員の士気を高め、業績を向上させました。話を戻すと、現在は、会社の業績を高めていくためには、どういう製品を製造するか、どういう方法で製品を販売するかということよりも、“主体化した人”をどうやって増やして行くのかというアプローチが、より重要になってきていると、私は考えています。

2022/9/3 No.2089