鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社長と社員は気持ちの上では対等

[要旨]

ニトリでは、経営者と従業員、上司と部下の関係は対等と考えて接しています。それは、もし、上司が部下に尊大な態度で接していれば、部下の士気を下げてしまい、成果も下げることにつながるからです。また、マネジメント層とライン層は、上下の関係にあるのではなく、役割が異なるという観点からも、マネジメント層とライン層が対等であると考えることは妥当と言えます。


[本文]

今回も、前回に引き続き、ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんのご著書、「ニトリ-成功の5原則」を読で、私が気づいたことについてご紹介します。似鳥さんは、従業員の方とは、お互いに人間として対等な立場にあるという考え方で接しているそうです。「私は、妻の働きは認めていました。妻から、『ひとつだけあなたのいいところは、食べさせてやってると、1度も言わなかったことと言われたことがあります。実は、妻は、『もし、食べていられるのはオレのお陰だ、文句を言うなと言われたら、すぐに離婚しよう』と思っていたそうです。(中略)

この関係は、ビジネスでも同じです。社員同士も、上司もと部下も、社長と社員も、気持ちの上で常に平等、対等でないといけません。もし、社長が、『給料を払ってやっているんだから、ありがたく思え』などと言ったら、その瞬間に、社員のやる気は消え失せてしまいます。(もし、逆の立場で、そんなことを言われたら)そんな会社には(自分は)いない方がいいと、私も思います。会社と社員も、社長と社員も、持ちつ持たれつ、私は、常に、『社員のお陰で食べさせてもらっている』と、感謝しています。社員の中にも、尊敬する人、敬服する人、『(似鳥さんでも)かなわない』と思える人が、たくさんいます。

ニトリでは、新入社員から会長まで、男性も女性も、お互いに『さん付け』で呼び合うことになっています。(中略)一般社員も、マネージャーも、ベテランも新人も、お互いに同じ人間として対等と認め合うことが大事なのです。もちろん、『長』の付く人には、責任が付いてきます。だから、仕事に関しては、厳しく叱ったり怒ったりすることも必要です。しかし、責任が重いということと、偉いかどうかということは、関係はありません」(115ページ)

この似鳥さんの考え方には、必ずしも賛同できないという方もいると思いますが、社長が従業員に対して、「給料を払ってやっているんだから、ありがたく思え」と口にしたり、そのような態度で接したりすることは、道徳的にも問題であるし、従業員の士気を下げることになるということは、似鳥さんのご指摘の通りだと思います。そして、この従業員の士気の問題とは別に、マネジメント層は、ラインに携わる人たちの上位に立っているのではなく、職種のひとつであるという考え方からも、似鳥さんの考え方は妥当であると思います。

従来は、社長や部長という地位は、出世してそのポジションに就くものであったし、現在も、そのような状態である会社も多いと思います。でも、現在は、マネジメント活動は、より高い専門性が要求されるようになってきており、事業活動でよい成果を得て出世した人が、必ずしも、マネジメント活動で十分な役割を果たすことができるとは限らなくなってきています。しかし、このことは、ラインではあまり力を発揮できなかったけれども、マネージャーとしては十分な適性を発揮する人もいるということでもあります。

すなわち、マネジメント層とライン層は、上下の関係ではなく、それぞれ適材適所で役割を分担していると考えることができます。したがって、マネジメント層とライン層に携わる人は、似鳥さんの指摘するように、対等であると考えることが適切です。そして、繰り返しになりますが、会社の中で、役職員が対等に接している会社は、士気が高まり、それぞれの立場で力を十分に発揮できるようになるでしょう。

2022/11/1 No.2148