[要旨]
枚岡合金工具でゴミゼロ化を始めてから2年目に、社長の古芝さんは、反対派従業員の方から不満を向けられました。しかし、古芝さんは、反対派の存在は避けることができないので、2割の賛成派と6割の中間派に改善活動の継続を働きかけることで、5年後に事業を黒字化することに成功しました。
[本文]
今回も、枚岡合金工具社長の古芝さんのご著書、「儲けとツキを呼ぶ『ゴミゼロ化』工場の秘密」を読んで気づいたことについて述べたいと思います。古芝さんが会社の「ゴミゼロ化」を始めてから2年目に、反対派の従業員の方から、「ゴミゼロ化をするくらいならば、本来の仕事に労力を割くべきで、結局、社長たちが社外で良い格好をしたいためにやっているだけだ」と不満を言われたことがありました。この出来事の後、古芝さんは、262の法則に基づいて、従業員の方たちに接するようにしたそうです。
「私は抵抗する人の出現を、『262の法則』で理解しました。何かに取り組むとき、2割の人は推進派となり、6割はそれに引っ張られる中間派となり、残りの2割が反対派になる、これが262の法則です。(中略)わが社において、ゴミゼロ化の推進派は、私と弟の古芝義己で、それ以外の6割の社員が、『社長と常務がいうから、やろう』とついてきてくれている中間派、そして、慰労会で異を唱えた彼が反対派です。(中略)多くの経営者は、反対派の2割にエネルギーを注いでしまいます。
そうなると、ついて来てくれた中間派への影響力が強まり、力が拮抗して引き合いになってしまうのです。しかし、反対派を気にせず、推進派と中間派の8割に力を注ぐと、全体がそちらに引っ張られていきます。経営者としては、1人でも多くの味方をつくることに力を注ぐべきであり、そうすることで、反対派をも巻き込んでいくことができます」(143ページ)結果として枚岡合金工具は黒字化するのですが、反対派従業員から反対意見が出た時点では、古芝さんも、ゴミゼロ化の効果を客観的に示すことができないでいました。
そのような状況では、古芝さんは、つらい立場にあったと思いますが、反対派の存在を避けることはできない、そうであれば賛成派と中間派に継続を働きかけようと考えること、すなわち262の法則の考え方に基づいて、ゴミゼロ化を継続することができたのだと思います。そして、枚岡合金工具では、ゴミゼロ化という方法で事業の改善をしたわけですが、事業の改善の方法は、ゴミゼロ化だけとは限りません。
ほかにもさまざまな事業の改善の方法があります。そして、そういう改善活動を実行することで、従来の仕事のやり方を変えるときは、どうしても反対派が存在します。そういった面では、事業の改善は、反対派との戦いともいえます。また、反対派は、従業員だけでなく、経営者の心の中にも存在するでしょう。経営者の心の2割の部分では、改善活動が成功すると思いつつ、6割は懐疑的であり、2割は失敗するかもしれないと感じていることもあるかもしれません。
だから、経営者の方がちょっと不安になると、改善活動の継続に対して弱気になり、活動を諦めてすしまうことになりかねません。したがって、改善活動は、効果が得られるものであるかどうかの前に、経営者の方が継続できるだけの強い心を持っているかどうかという要素が大きいと思います。そこで、改善活動を実践するには、経営者の方の意思の強さが重要だと、私は改めて感じました。
2022/8/10 No.2065