鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

社内で経営資源を配分する役割

[要旨]

複数の事業を営む会社では、経営者は、限られた経営資源で最大の効果を得ることができるよう、事業間での利害を調整し、配分する役割があります。その判断を適切に行い、社内の各事業の責任者や、社外のステークホルダーに適切に説明できるようにするためには、ファイナンス思考を持つことが大切です。


[本文]

今回も、コンサルティング会社のシニフィアンの共同代表の朝倉祐介さんのご著書、「ファイナンス思考-日本企業を蝕む病と、再生の戦略論」を拝読して気づいた点をご紹介したいと思います。前回は、会社の事業は、顧客、従業員、株主の間で最適のバランスをとることで、最大の成果を得ることができ、そのバランスをとることが経営者の役割であるということを述べました。今回は、著者の朝倉さんの考える経営者のタイプについて説明します。

「一口に『経営者』と呼んでも、会社の成長ステージや置かれた状況によって、求められる才覚は大きく異なります。私自身は、会社の成長ステージに応じて、『経営者』を、次のように細分化してとらえています。創業期:『起業家』→0から1を生み出す、まったく何もないところからサービスや製品を立ち上げる段階。(中略)成長期:『事業化』→立ち上がったプロジェクトを、継続して利益を創出する規模感の大きい事業にまで仕上げる段階。(中略)

成熟期:『経営者(狭義)』→自社事業の規模感が10まで育った会社のステージを100まで持っていく段階。『10を100にする』というのは、既存の事業の規模感を10から10倍大きくするという意味ではなく、事業を複線化し、10まで育った事業を10個並行して運営する状態。視点は、『個々のプロダクトをいかに育てるか』から、『複数のプロダクトを運営する組織をいかに経営するか』に移る。(中略)扱う資産が増え、事業ポートフォーリオの管理の視点など、より、ファイナンス思考が重要になる」

前回、経営者は、ステークホルダーの間での利害調整を行う役割があると説明しましたが、複数の事業を営んでいる規模の大きい会社でも、「かね」を含む、経営資源の配分で利害調整が必要になるということです。したがって、朝倉さんのご指摘する通り、複数の事業を営む会社では、経営者の方はファイナンス思考が必要であり、より多くの会計に関する知識が求められます。そうすることで、より精緻な判断ができるようになり、また、経営者の判断した資源配分の結果を、社内の各事業の責任者や、社外のステークホルダーに説得力をもって説明できるようになります。

2022/3/20 No.1922

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