鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

『経営』はヒエラルキーではなく職種

[要旨]

経営者には、ファイナンス思考が必要であり、そのためには、ある程度、会計的な専門性も持たなければなりませんが、そのような観点から考えると、経営者は、サラリーマンが出世して就く、ヒエラルキーの上のポジションではなく、研究者や営業職と同様の、ひとつの職種であるととらえることが適切です。


[本文]

今回も、コンサルティング会社のシニフィアンの共同代表の朝倉祐介さんのご著書、「ファイナンス思考-日本企業を蝕む病と、再生の戦略論」を拝読して気づいた点をご紹介したいと思います。前回は、経営者は、限られた経営資源で最大の効果を得ることができるよう、事業間での利害を調整し、配分する役割を担っている、したがって、会計を深く理解し、ファイナンス思考を持つことが必要ということについて説明しました。

今回は、経営者は職種であるということについて説明します。「職業としての『経営』は、起業のプロセスに比べると非常に地味です。そうしたわかりにくさの問題もあって、日本においてはあまりに経営が軽視されているのではないでしょうか。『経営』は立身出世の末に獲得する地位ではなく、研究開発やマーケティングと同様の、ひとつの職種です。ヒエラルキーではありません。職種としての『経営』を担うためには、相応の素質や知見を身につける必要があります」

前回まで、経営者は、ファイナンス思考を持つことが大切で、そのためには会計に関する知識が必要であるということを中心に述べて来ました。そう考えると、経営者の方には、専門性が必要ということが言えます。したがって、朝倉さんのご指摘するように、『経営者』は、研究者や、営業職などと同様に、専門的な職種であると考えると、理解がしやすくなります。ただ、日本では、経営者は、サラリーマンが出世して目指すべきポジションというイメージが強いので、職種ではなくポジションと考えられることが多いということも事実でしょう。

そこで、経営者になることを目指している会社の従業員がそのように考えていると、経営者はポジションなのだから、朝倉さんの言うファイナンス思考を高めようとする方は少ないのかもしれません。このような考え方の転換は、直ちには難しいかもしれませんが、日本では、いわゆる「プロ経営者」が徐々に活躍し始めており、経営者はヒエラルキーではなく職種という認識も広がっていくと思います。むしろ、経営者は論功行賞として得られるポジションという人事をしている会社は、競争力が下がっていくのかもしれません。

2022/3/21 No.1923

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