鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

リースはファイナンスサービス

[要旨]

事業活動を拡大していくにあたって、リース取引を、銀行融資と同様のファイナンスサービスとして活用することが望ましい。

[本文]

先日、私が6年前に出版した、「図解でわかるリース取引の実務いちばん最初に読む本」が増刷され、第6刷となりました。(ご参考→ http://amzn.to/1o1VluB )地味な実務書であるにもかかわらず、6年間、コンスタントに売れているということから、ビジネス界でリースに関する関心が高まりつつあるからではないかと思っています。そこで、今回から、数回にわたり、あらためてリースの活用法等について説明して行きたいと思います。今回は、リースはファイナンスサービスであるということについて説明したいと思います。

このリースというサービスは、まだ利用したことがない方から見ると、確かに、分かりにくい面があると思います。というのは、リース(lease)は、賃貸借という意味であり、日本でも、法律上は賃貸借契約として扱われています。(ちなみに、融資契約は、金銭消費貸借契約、すなわち、お金の貸し借りです)一方、リースは、会計上は、融資取引として取り扱われています。

リース会計基準では、例えば、1,000万円の機械をリースで調達したときは、その金額を固定資産(勘定科目はリース資産)に計上し、同時に、同額を(一般的には)固定負債(勘定科目はリース債務)に計上します。すなわち、勘定科目は異なるものの、1,000万円の長期借入金で同額の固定資産を購入したときと、同じ会計処理が行われます。(この説明は、理解を容易にするために、正確さを犠牲にしていることをご了承ください。また、中小企業等には、リース会計基準に基づく会計処理は義務付けられておらず、多くの中小企業では、リース取引を賃貸借契約として会計処理しています)

それでは、なぜ、賃貸借契約であるリース取引が、会計上は、融資取引として取り扱われるのでしょうか?その理由のひとつめは、リースによって調達する資産(以下、リース物件と記します)は、もともとリース会社が所有しているものを賃貸するのではなく、リースの利用者(以下、ユーザーと記します)が指定したものを、それを販売している会社(以下、サプライヤーと記します)が、直接、ユーザーに届けるからです。

すなわち、ユーザーがリース会社にリース契約を依頼し、リース会社がそれを承認すると、リース会社はサプライヤーにリース物件の代金を支払い、サプライヤーはユーザーにリース物件を直接納品します。もちろん、リース物件の所有権は、リースが開始されてからもリース会社が持ちますが、リース物件の管理や修繕は、リース契約に基づいてユーザーが行います。これらのことからも分かる通り、リース物件の所有権はリース会社にありながら、実態は、ユーザーがあたかも自らが所有しているものと同様の状態となります。

ふたつめは、一般的なリース契約は、解約が不能(ノンキャンセラブル)であり、かつ、リース物件の調達にかかる費用は、実質的に、すべて、ユーザーが負担(フルペイアウト)するものである(これを、所有権移転外ファイナンスリースといいます)ことから、このことも実態としては、ユーザーがリース会社から融資を受けて、リース物件を購入したことと同じことになるからです。(所有権移転外ファイナンスリースについては、実際は、細かな条件がありますが、ここではその説明は割愛します)

以上のような理由から、リース、表面的には賃貸借契約ですが、実態はファイナンスサービスと言えます。したがって、私は、多くの中小企業経営者の方には、リースについても、資金調達手段である融資と同様に考えて、積極的に活用していただきたいと思っています。しかし、ここで、融資とリースの違いはなにか、どう使い分ければよいのかという疑問を持つ方も多いと思います。それについては、次回説明したいと思います。

 

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