鄙のビジネス書作家のブログ

鄙で暮らす経営コンサルタント(中小企業診断士)・ビジネス書作家六角明雄の感じたことを書いているブログ

10-10-10の法則

[要旨]

信用の高い会社は、営業活動も不要であり、価格競争に巻き込まれることもありません。しかし、その信用を得るためには、長い時間がかかるため、最初から信用を得るための活動を避ける会社が多いようです。その結果、いつまで経っても、業績が低迷したままという状態に陥ってしまいます。


[本文]

イエローハット創業者の、鍵山秀三郎さんのメールマガジンを読みました。「現在当社は、新規開拓のための営業をしておりません。すべて、希望されるお客様との取引だけで成り立っております。しかも、見積書なしで、商品を納入させていただき、そのままの代金をお振り込みいただいております。掃除を通して、お客様とのあいだに『絶対肯定』『絶対安心』『絶対安全』の信頼関係ができたおかげです」すなわち、イエローハットでは、いわゆる営業活動を行わず、また、前もって価格もきかれることなく、いわゆる「言い値」で販売できるということであり、そのような状態は、ビジネスパーソンとしては理想的ですね。

イエローハットがそのようなことができるようになった要因は、メールマガジンに書かれてあるように、鍵山さんたちの清掃活動によるところが大きいわけですが、ほかの会社が清掃活動を始めれば、翌日からイエローハットのような信用を得られるわけでもないことは言うまでもありません。そこで、鍵山さんのように、信頼関係をつくるための活動を、最初から行わないという会社が、圧倒的に多いのだと思います。その一方で、顧客への営業活動を行うことは避けられないわけですから、そうであれば、地道な信頼関係構築に努めることの方が得策だと、私は考えています。

ところで、平成9年から4年間、帝国ホテルの社長を務めた藤居寛(故人)さんは、「10-10-10の法則」という法則をお話していたそうです。その法則とは、ホテルが顧客からの信用を得るためには10年かかるが、従業員が粗相をしてしまうと10秒間でその信用を失い、また信用を得るまでに10年かかるという意味だそうです。この法則は、ほとんどの方が理解されると思いますが、一方で、うまくビジネスができるようになるまで10年も待つことができないという方もたくさんいると、私は感じています。

でも、帝国ホテルのような会社でさえ、比喩とはいえ、信用を得るために10年間という長い時間がかかるという前提で事業に臨んでいるわけですから、ほかの会社も、少なくとも、同様の努力が欠かせないと考えることの方が自然でしょう。しかし、そこに目を向けず、「もっとうまい方法があるはずだ」と考えて、成行の活動を続けていれば、結局のところ、いつまで経っても、その会社は信用を得られないことになると、私は考えています。

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