[要旨]
事業再構築補助金で建物を建てる建物について、担保を設定するときは、事前に補助金事務局に承認を得、かつ、普通抵当権に限定されます。このような取り扱いは、銀行からみると、やや、異例のものとなりますので、早い段階から、銀行にご相談しておくことが大切です。
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中小企業診断士のK先生から、事業再構築補助金に関する担保設定についてお尋ねがありました。事業再構築補助金の公募要領の21ページには、次のような記載があります。「補助事業により建設した施設等の財産に対し、抵当権などの担保権を設定する場合は、設定前に、事前に事務局の承認を受けることが必要です。補助事業遂行のための必要な資金調達をする場合に限り、担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認められます。なお、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められません」
例えば、補助対象事業で、6,000万円の建物を建てるにあたり、4,000万円を補助金で、2,000万円を銀行からの融資で、建設代金を支払うことにしているとします。(理解を容易にするため、消費税については、考慮しないこととします)そして、銀行が2,000万円の融資を行うとき、一般的には、融資対象物件に抵当権を設定します。抵当権(広義)には、普通抵当権(狭義の抵当権)と根抵当権の2つの種類がありますが、特段の事情がない場合、融資取引の担保は、根抵当権が使われることが一般的です。(両者の違いについては、こちらをご参照ください。→ https://bit.ly/3dUZ25j )
しかし、前述のように、補助金を使って建てた建物は、普通抵当権のみが認められます。さらに、「担保権実行時に国庫納付をすることを条件に認める」とは、融資を受けた会社が返済不能となり、銀行が、担保としている建物を売却し、その代金で融資の回収を行うことになった時、「国庫納付」、すなわち、建物の売却代金の一部を国に支払うという条件と思われます。ただし、公募要領に記載してある説明文だけでは、実際に、どれくらいの金額を国に支払うことになるのかということは分かりませんが、銀行側からみれば、担保としての利用価値が低くなると思われます。
とはいえ、建物の建設代金の3分の2が補助金で支払われることから考えれば、融資額は、最大でもその3分の1ということになるので、実際の担保処分による回収への影響は、あまり大きくないのではないかと思われます。この点については、詳細がわかり次第、あらためてお知らせします。いずれにしても、補助金で建築した建物を担保にするときは、通常の担保設定を行うことができないことから、補助金申請の段階から、銀行に綿密な相談をしておくことが望まれます。なお、この担保設定の制限に関し、いくつかの疑問点がありますので、それについては、次回、述べたいと思います。